「味が決まらない」を解決する調味料の選び方とは。神舌バイヤー岩城紀子さんに教わる【しょうゆ】と【みそ】の選び方
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岩城紀子
「料理が下手だ」とコンプレックスになっている人がいたら、いい調味料を使ってみて!というのは、食のセレクトショップ「グランドフードホール」を運営する岩城紀子さん。おいしい調味料を使えば、同じ材料で同じ調理方法で作っても、びっくりするほどおいしくできあがるのです。大事なのは、商品を選ぶ前に「裏を見て」原材料名などを確認すること。今回は、しょうゆとみその「裏」の読み方教えていただきましょう。
しょうゆのおすすめは「天然醸造」
しょうゆの値段はまさにピンキリです。1リットル300円以下もあれば、1000円を軽く超えるものもあります。その違いはどこにあるのでしょう。
ひとつは原材料です。「大豆」もしくは「丸大豆」と書かれたものと、「脱脂加工大豆」と書かれたものがあると思います。
丸大豆とは加工をしていない大豆のことで、丸大豆のしょうゆには大豆本来のうまみやコクがあります。
丸大豆には国産と輸入品がありますが、輸入品は遺伝子組み換えでコストをかけずに大量生産されたものが多いのです。安価ですが、ポストハーベスト(農薬)の問題もあり、健康面での懸念があります。国産の遺伝子組み換えでない丸大豆を使ったしょうゆは値段も高くなります。
脱脂加工大豆を使ったしょうゆはかなり安くできます。大豆油をしぼったあとのしぼりカスを使って、短期間で発酵・熟成させて造るからです。戦後の大量生産時代に使われ始めたもののようです。
しょうゆの品名も見てください。「しょうゆ(本醸造)」と書かれているものが8割がただと思います。「本醸造」とは、大豆(脱脂加工大豆も含む)に小麦と塩を加えた昔ながらの製造方法で、アミノ酸液や酵素分解調味液などを添加したものは「混合醸造」と表記されています。
本醸造でも添加物を加えたものがありますから、「本醸造なら昔ながらの製法で安心」と言いきることはできません。発酵を促進させるための酵素、長持ちさせるための保存料、味つけのためのアミノ酸などが追加されても本醸造と表記できるので注意が必要です。
私が選ぶのは、ラベルに「天然醸造」と表記されたものです。天然醸造は、本醸造製法で造られたうえで、さらに「発酵促進のための酵素を添加しない」「食品添加物を使用しない」というルールがあります。原材料名は、大豆・小麦・塩のみとシンプルです。
熟成方法にも私は注目します。現在はほとんどのしょうゆがステンレスの樽で熟成されていますが、あえて昔ながらの木桶で造っているメーカーさんのものを選びます。味に深みとコクがあり、これをちょろっとかけるだけで煮物でも刺身でも豆腐でも、本当においしくなるんですよ。
みそは「膨張する」ものをチェック

国産大豆や有機栽培大豆などと書いているものは安心。
みそは日本全国各地でさまざまな味のものが造られています。基本の原料は大豆なのですが、そこに米麹を加えると米みそ、麦麹を加えると麦みそ、大豆麹なら豆みそ(八丁みそ)です。
製造方法には「天然醸造」と「速醸法」があり、天然醸造は昔ながらの製法のものです。加熱して、1年程度の時間をかけて発酵させたものをいいます。速醸法は、2~3カ月程度でできあがるものです。
裏を見て、添加物もチェックしてみましょう。
原材料として、大豆、米または麦、食塩と書かれていると思います。本来はこれで十分なのですが、だし入りみそなどには化学調味料が添加されています。ビタミンB2が添加されているのは、見た目を鮮やかにするためです。
酒精やアルコールが添加されえいるのは、発酵が進んで容器が膨張するのを防ぐためです。それらを添加することで麹菌が不活性になり、容器の膨張や、熟成による色の変化を防ぎます。メーカーはお客様からの「色が変わった」とか「膨らんだ」というクレームが怖くて、添加物を使ってしまうのです。
容器のどこかに「容器が多少膨張することがあります」などの注意書きがあるものは「生きているみそなんですよ!」というメッセージでもあります。
大豆についてもチェックしてみてください。大豆は圧倒的に輸入ものが多いのですが、輸入されたものは遺伝子組み換えの可能性があります。国産大豆、有機栽培大豆などと書かれているものは安心ですが、値段も少しアップします。

グランドフードホール六本木店。「緊張感あふれる日々の中で、体が喜ぶもの、心がほっとするものを食べてほしい」という思いを込めて2018年にオープン。
※この記事は『裏を見て「おいしい」を買う習慣』岩城紀子著(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。
