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昔の写真、置き家具、オタ活、よそ行き服……「手放したいものはまだまだある」という岸本葉子さんの、手放すヒントとは?

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ゆうゆう編集部

「こうしなくちゃ」と当然のように思っていたことを、やめたり、手放したりすると、生きるのがぐっと楽になることが! 「手放すことを恐れなくても大丈夫」と言うのは、エッセイストの岸本葉子さん。手放し上手な岸本さんに、そのコツやヒントをお聞きしましょう。

思い出や愛情はモノではなく心の中に

リフォームやコロナ禍など、折に触れて断捨離や整理を行ってきた岸本葉子さんだが、「手放したいものはまだまだある」と言う。

「まずはCDとステレオ。この前、久しぶりに音楽を聴こうと思ったら、ステレオが壊れていることに気がついたんです。直したり買い替えたりする必要があるかと考えたら、『なくてもいいかな』と思いました。今はモノではなく利用する権利を買う時代。音楽はCDというもので持たなくても、ダウンロードしてパソコンなどで聴けますよね。だから『持つ』という形の消費から『利用する』という形の消費に変えてもいいんじゃないかなと思っています」

さらに、思い出のあるものも手放す候補にリストアップ。
「親が取っておいてくれた、子どもの頃に描いた絵があります。見れば懐かしい気持ちになるだろうし、親の愛情も感じるだろうけれど、箱に入ったまま10年以上見ない……。 思い出や感謝、愛情というものは、そのものに宿っているのではなく、もう私の心の中に移行したのではないか。そう思い始めて、ゆくゆくは手放そうかなと考えています」

「あとは、自分のインタビュー記事などの切り抜きが30年以上分くらいあって。作ってくれた人への感謝もあるし、自分の記録でもあるので、書類ケースに入れて保管していますが、30年前の記事を見返すことはもうありません 。『取ってある意味、あるのかな』と思っています」

「コロナ禍で人づき合いが減り、心身ともにより身軽に。
「『老後、寂しいのは嫌』という不安から、保険として人づき合いをキープしている場合もあるかもしれません。でも、手放したくない一方で、ちょっと重いなと感じているとしたら、思いきっておつき合いを減らしてみては。まだまだ人生は続くし、新しい出会いもあります。手放すことを恐れなくても大丈夫ですよ」

やめて楽にする「置き家具と昔の写真」

50代半ばでひとり暮らしの自宅をリフォームしたときと、60歳を迎えたコロナ禍のまっただ中、計2回の大きな断捨離を実行した岸本さん。「写真は気持ちのうえで捨てにくいものですが、いざ始めてみると本能的に『あ、いらない』と手が動いて、手放すことができました」

写真整理は断捨離の聖域……ではなかった!

家をリフォームした際、家具をたくさん手放しました。置き家具をやめて造りつけの収納にしたので、用途として不要になるし、物理的に部屋に入らないし。親から譲り受けたコーヒーテーブルや、30代のときに自分で頑張って買った英国中古家具など、愛着のある家具も手放し、カップボードとダイニングテーブルの2つだけを残しました。将来、施設などに入るとしたら 今以上に狭い部屋になると思うので、この断捨離はいい手放しレッスンになったと思います。
コロナ禍中には写真を整理しました。段ボール箱に入れて放置していた家族の写真。箱を開けるまでは心が重かったのですが、失敗や無駄なショットも多く、心おきなく手放せました。

収納は造りつけに  リフォームの際、タンスをやめてクローゼットに、本棚も造りつけに。

封筒1つにまとめて  大きめのダンボール1箱分あった写真を、A4判の封筒1袋分まで断捨離。

やめて楽にする「オタ活と通いにくいジム 」

長く続けている習慣の中には、見直してみると「私には合わない」と思うものも。「たとえばジムは一度入会するとそのままで、自分にとって本当に最適かどうかなんて考えませんよね。コロナ禍でライフスタイルが変化した今こそ、見直してみるといいかもしれません」

習慣を見直してストレスフリーに

私は一時期フィギュアスケートオタクだったのですが、試合を観に行けばトイレには大行列、パンフレット1つ買うのにも並ぶ、駅も混むなど、体力的に大変で。コロナ禍で試合が無観客になったり、アイスショーも中止になったりしたとき、「私のオタ活も終了」と思い、やめました 。
それから、ジムの加入状況の整理も。習慣で会員になり続けていた2つのジムをやめて、自分のライフスタイルに合った新しいジムに入会。今はストレスなく、思う存分楽しんでいます。

やめて楽にする「よそ行き服と重い人づき合い」

「もともと巣ごもりが大好き」と岸本さん。ここ3年ほど、外出の機会が減ったことにも苦しさを感じていないと話す。「お店のエアコンの温度や椅子の高さが合わない、にぎやかすぎて疲れる……。 外に出ると細かいことが気になるけれど、それがなくなって心身も健やかに」

人づき合いが減りおしゃれ着も不要に

コロナ禍で人づき合いが少し楽になりました。以前はお誘いをお断りするときに「申し訳ないな」と思っていましたが、今はお誘いそのものが減ったのでホッとしている部分があります。
取材もリモートが増え、自宅にお迎えするための準備など、気が張ることも少なくなりました。外出が減ったので、よそ行きの服なども減らしました。おしゃれ着が減ると、パンプスやハンドバッグもいらなくなって。今、クローゼットの中がとてもすっきりしています。

profile
岸本葉子
きしもと・ようこ ● エッセイスト
1961年、神奈川県生まれ。東京大学教養学部卒業。会社勤務、中国留学を経て文筆活動を開始。日々の暮らしや旅を題材としたエッセイを数多く発表。「NHK 俳句」(NHK Eテレ)の司会も務めた。11月25日には新著『ひとり力の 磨き方』(佼成出版社)を刊行。

※この記事は「ゆうゆう」2022年11月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のため再編集しています。

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