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夫を見送った、イラストレーター本田葉子さんの正真正銘のひとり暮らし。「身軽になった自分を心から言祝ぎ、新生活を楽しみたい!」

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ゆうゆう編集部

5年前、夫を見送り、義母と息子、愛犬とともに東京都から神奈川県小田原市へと移り住んだ本田葉子さん。その穏やかな暮らしに、転機が訪れている。「この家に越してきた日から、心の準備はしていたのかもしれません」本田さんが今思うこと、そしてこれからの暮らしとは?

夫を見送った、イラストレーター本田葉子さんの正真正銘のひとり暮らし。「身軽になった自分を心から言祝ぎ、新生活を楽しみたい!」

築80年以上の古民家を借り、さまざまな工夫でおしゃれに暮らす本田さん。仕事場兼居間の長押(なげし)には、夫が愛用していた帽子を飾って。タペストリー代わりの手ぬぐいは、季節ごとにかけ替え、楽しんでいる

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PROFILE
本田葉子
ほんだ・ようこ●イラストレーター
1955年、長野県生まれ。25歳で結婚し、2児の母に。2017年に夫の逝去を機に、義母と息子、愛犬とともに神奈川県小田原市に移住。東京新聞・中日新聞と、やずやのウェブサイト「ココカラPark」にて、おしゃれや暮らしのあれこれを綴ったエッセイを連載中。著書に『おしゃれと暮らしのレシピ』(東京新聞出版局)他。
ホホホの本田Style

戸惑いから始まった 40年ぶりのひとり暮らし

これから、正真正銘のひとり暮らしが始まります──。

本田葉子さんからゆうゆうの編集スタッフ宛てにそんなメールが届いたのは、この8月のこと。夫を見送り、神奈川県小田原市へと居を移した本田さんの暮らしぶりを紹介したのは、約2年前。当時は義母と息子、愛犬と暮らしていた本田さんだが、聞けば家族の形に大きな変化があったという。

「去年、おばあちゃん(夫の母)が亡くなり、今年の5月に愛犬のスーが旅立って。8月には息子が独立すると言って家を出たんです。これまでも息子は週末、家にいないことが多かったので、ひとり暮らしの練習期間のようなものはあったけれど……。いよいよ正真正銘のひとり暮らしがスタートした、という感じです」

こうして始まった、独身時代以来の約40年ぶりとなるひとり暮らし。
「今はまだ戸惑っているというか、ちょっと拍子抜けしている感じかな」と本田さんは笑う。

「おばあちゃんの介護をしていた頃は、こま切れの時間を見つけては『15分あるから庭の草むしりをやっちゃおう』『1時間あるから畑に行ける!』なんてあれこれやっていたけれど、今はたっぷり時間ができたでしょう? 時間がありすぎて、何をしたらいいのかわからないというか。どこか拍子抜けしているような感じなんです」

そんな日々の中、夕方になれば、決まって思うことがある。
「あぁ、ひとりなんだって思うんですよね。家族のご飯を作らなくていいんだという思いと、ひとりなんだという思いがふとよぎるんです。食べなきゃいけないから自分のご飯は作るけど、ちょい飲みのおつまみみたいな簡単なものばっかり(笑)」

本田さんのブログにも、似かよった境遇の同年代の読者からメッセージが届くという。
「ペットを亡くして、何もする気が起きません……。そんなメッセージにどんな言葉を返せばいいのかと、悩みながら返事を書いています。しばらくは寂しいですよねって。元気を出して、とは書かないの」

気持ちに寄り添う言葉は、同じ経験をしてきたからこそ。本田さんからのメッセージに、心が軽くなった人はきっとたくさんいるはずだ。

16歳で旅立った 愛犬スー

本田さんの傍らには、いつもスーの姿があった。「亡くなる前日まで、お散歩に行っていたんですよ。今でもお散歩コースを歩くたびに、『あぁ、スーとここに来たなぁ』と思い出してしまいますね」

畑仲間からかけられた あたたかな言葉

本田さん自身も義母を亡くしたときに、近所に借りている家庭菜園を通じて知り合った仲間たちからこんな言葉をかけられた。

「『昔なら赤飯を炊くようなこったよ』。そう言われたとき、グッときましたね。義母は98歳でしたから、大往生だったねという意味で言ってくださったんでしょう。それなら、16歳で旅立ったスーにもお赤飯を炊いてあげなくちゃいけないな……なんて思ったりして(笑)」

小田原への転居は、夫亡きあとの暮らしを経済的、サイズ的に縮小するという、大きな目的があった。同時に、高齢の義母と愛犬が安心して最期を迎えられる場所を見つけたい、という願いもあった。
「そういう意味では、この家に引っ越してきた5年前からおばあちゃんとスーを見送る心の準備は徐々にしていたのかもしれません。二人とも最期のときまでしっかりしていて、私が見ている前で、すぅっと眠るように亡くなって。二人を看取り、私自身、やり遂げた感もあったような気がします」

穏やかにほほ笑む本田さんだが、当時は同居していた息子さんに、とても心配されたそう。
「『おばあちゃんとスーを亡くしてできた心の穴は、犬を飼うことでしか埋められない。だから犬を飼おう』と息子が言ってきて。スーは保護犬だったんですが、私がまたいつか保護犬を迎えたいと思っていたことを知っていた息子は、「60歳を超えると保護犬の譲渡には後見人が必要になるけど、僕がなるから』とも言ってくれたんです」

犬との生活のすばらしさは、十分にわかっている。けれど……。
「さあ次、とはならないんですよね。犬が病気になったら自分の生活をすべて捧げるくらいの覚悟が必要になりますが、私は今67歳。次に迎える犬の面倒をちゃんと最期まで見られるのかと考えたら、できないような気がして……。なかなか決心がつかないうちに、引っ越し先が決まった息子はとっとと家を出ていっちゃいましたけど(笑)」

手にした大きな葉は、畑で育てているパパイヤの葉。「春に苗を植えたら、あっという間に160㎝ほどの大きさに! 先日、可憐な花も咲きました」

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