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幼いころから人間不信むき出しだった地域猫。やっと人間に心を許し、最期まで信頼してくれた【地域猫の実話】

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マチュアリスト編集部

さくらはまだ1歳にも満たない子猫です。遊びは大好きなはず。
猫じゃらしやネズミのおもちゃなどをさくらに見せると、最初はおそるおそる近づいてきますが、怖いものではないとわかると、楽しそうに遊んでくれるのです。
「これはボクの大事な宝物だ」とでも思うのか、少し遊ぶとおもちゃをくわえてどこかに持っていってしまうので、さくらのためにといろいろおもちゃを買っていました。

さくらはこのまま地域猫として、ふーこたちと穏やかに暮らしていくのかな、と思っていた矢先のこと。
ある日、明らかによそから来たオス猫にふーこが襲われそうになったのです。
「ウー!」と猫同士が威嚇し合う低い鳴き声が聞こえてきたので、外へ出てみると、ふーこを襲おうとしていたオス猫に対して、さくらが果敢に立ち向かっていました。
「たくましくなったな」とそんなさくらを頼もしく思っていたのですが、翌日、さくらとふーこの姿がいつもの路地から消えました。

「2匹に何が起こったんだろう?」
昨日のことがあったので、私は胸騒ぎがしました。

妻と手分けして探すと、近所のお宅の物置の隅でふーこを発見。よく見ると首元の一部は毛が抜けており、ジュクジュクと血が滲んだ傷口は腫れていました。
おそらくあのオス猫に噛まれて、傷口が膿んでしまったのでしょう。
動物病院へ連れていき、手当てをしてもらいました。
でも、さくらはどこにいるのかわからないままでした。

さくらが見つかったのは、1週間がたったころでした。
よろよろと歩きながら現れたさくらの姿に喜んだものの、抱き上げると羽のように軽くて力がありません。

すぐに動物病院で診てもらうと、レントゲン検査から、
「肺に膿がたまっていて、もう長くはないでしょう」という診断で、耳を疑いました。
さくらの体には、どこを探してもケガはありませんでした。
おそらくふーこの傷口をなめてあげて、それが膿の原因だったのかもしれません。

翌日、さくらは息を引きとりました。
野良猫ならば、人間から見えない場所で亡くなっていたのかと思うのですが、さくらは最後の力をふりしぼって私たちの前に姿を現してくれました。

私たちを信じてくれていたのだと思うと……。
出会ってから1年余りでしたが、さくらと心が繋がれたことがうれしかったのです。

さくらが亡くなってしばらくたったころ。 我が家の庭の植木鉢の裏から、さくらが隠していたおもちゃがたくさん出てきたのです。

「こんなところに宝物を隠していたんだね」
やっと人間に心を許し、おもちゃで遊ぶ楽しさを覚えてくれたのに。そんなさくらのこ とを思いながら、しばらくの間、涙が止まりませんでした。

さくらに守られたふーこは、のちに我が家で引き取り、17歳になる少し前まで元気に過ごし、天寿を全うしてくれました。

※この記事は『猫がいてくれるから』主婦の友社編(主婦の友社)の内容をWeb掲載のため再編集しています。

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