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田幸和歌子の「今日も朝ドラ!」

【舞いあがれ!】は「スチュワーデス物語」か。【朝ドラ】の幅を手探りする脚本家×演出家

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田幸和歌子

舞ちゃんはどうなる⁉︎ わくわくしながら朝ドラを見るのが1日の始まりの習慣になっている人、多いですよね。数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。より深く、朝ドラの世界へ!

東大阪で生まれたヒロイン岩倉舞(福原)が、長崎・五島列島に住む祖母や様々な人との絆を育みながら、パイロットとして空を飛ぶ夢に向かっていくNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』の第10週目。

今週は舞の初恋と、中間考査、仲間との別れ、ソロフライトでの着陸訓練の苦闘、疲れの蓄積からの発熱が描かれた。

帯広でのフライト訓練の最中、大切な中間考査の直前に柏木(目黒蓮)から告白されそうになった舞。冷静沈着キャラだったはずの柏木が、相手のことを考えずに自分の思いだけで突っ走る展開は違和感もあるが、そうした矛盾だらけの衝動を抱えるのは若さゆえか。

舞は審査で着陸がうまくできなかったものの、ギリギリ合格になり、水島(佐野弘樹)一人が不合格となる。

水島は舞と柏木のサポートを得て大河内教官(吉川晃司)による再審査を受けるが、弱点を克服できぬまま帯広を去ることに。

しかし、その後、落胆しているはずの舞が柏木の部屋を訪ね、部屋にノートを忘れたことから、ノートを持って追いかけてきた柏木に机の下で告白される。大事な時期に全く集中できていない舞たちに、SNSでは怒りや呆れの声が噴出していたが、大事な時期だからこそ現実逃避で恋に走りたくなるものなのだろうか。

そこから舞たちはソロフライト訓練に臨むが、舞も柏木も水島がパイロットを諦めざるを得なかった原因を完全に大河内教官のせいにしていた。

柏木と共に「大河内教官を見返す」「努力は報われんねん!」「大河内教官、見といてや!」「私、教官に負けたくないんです!」と荒ぶる舞。

普通自動車免許ですら適正検査があるものなのに、まして人の命を預かる責任重大なパイロットという仕事に、向き・不向きがあるのは当然だ。にもかかわらず、「不適格な学生を落とす」嫌われ役を引き受けている、実に真っ当な指導教官の大河内に敵意を向ける舞。本来、人の気持ちに敏感で聡明な子だったはずなのに、思慮深さを忘れて他者を逆恨みする舞のテンションは"訓練生ズハイ”みたいな状態なのか、それとも恋というものはかくも人の視野を狭くさせるのか。

荒ぶる舞に憎しみを向けられつつ、離陸のときにゴーサインを出す姿を見ても、疲れで倒れた舞にアイスクリームの見舞いを買った姿を想像しても、大河内教官が気の毒でならない。

当初の設定では口調も「ワイルド」だったところ、吉川の「言葉遣いや物腰をものすごく丁寧に礼儀正しい男にしたい」という提案で魅力的な人物像になったらしい大河内教官。

その一方で、脚本や演出はその人物像に合わせて調整することなく、当初の「鬼教官」設定のまま進んでいることで、若者たちの浅はかな無理解や逆恨みが際立つ状態になっている。そして、1人好感度を上げる大河内教官……。

ドラマも映画も漫画も、フィクションでは「ストーリーありきで、進行の都合上わかりやすいキャラを配置する」パターンと、「人間ドラマありきで、人物を深掘りする中でストーリーがついてくる」パターンの2種に大別される気がする。

そんな中、本作は第7週までの桑原亮子氏脚本の作風が後者で、第8週以降の「航空学校編」の作風は前者に変わった印象だ。

作り手の得手・不得手も、視聴者・読者ひとりひとりの好みも大きく前者のパターンと後者のパターンに分かれがちだが、さらに脚本家×演出家の相性もあって、毎週試行錯誤を続けているように見える。

ドラマとしてのクオリティはともかく、実際に前者のパターンの航空学校編を「スチュワーデス物語みたいで面白い」と感じている人も一定層いるだけに、難しい。

朝ドラの幅を探る意味でも、今後もこうした手探りの実験は続いていくのかもしれない。

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