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「言葉は、作家として進むために背中を押してくれるもの」直木賞作家 窪美澄さんを変えた3つの言葉とは?

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ゆうゆう編集部

言葉を語ることは、人生を語ることかもしれません。「言葉」は、時に生きる希望となり、進むべき道を照らし、心の支えになってくれます。直木賞作家の窪美澄さんが大切にしている3つの「言葉」との出会いについてお話を伺いました。

生後すぐに消えた幼い命。その人生も生きていこう

『夜に星を放つ』で直木賞を受賞した窪美澄さん。喪失感や生きづらさを抱えた登場人物たちに注がれる作者のまなざしはあたたかい。それは窪さん自身が、大きな喪失を経験しているからかもしれない。

「26歳のとき、生後18日の第一子を細菌性髄膜炎で亡くしました」
 2年後に第二子を出産し、フリーランスの編集ライターとして育児分野を中心に仕事をしながら子育てをした。そして、42歳のときに初めての文学賞を受賞。

「なぜ小説家になったんですか?と聞かれると、いつも『息子の学費を稼ぐため』と答えてきたんです。でも本当は『二人分の人生を生きなくちゃ』と決心したから。そのためには、まず自分の人生を生ききらないとつまらないなと思いました。小説家になることは私にとって非常に大きな夢でしたから、その言葉に背中を押されました」

それは、編集の仕事でお世話になったマタニティスイミングの先生の言葉だった。彼女も3人目の子どもを幼いときに亡くしていた。

「40代で初めての小説を書き、『性』がテーマの文学賞に応募したんです。10代や20代の応募者が多い賞だったので、40代だからこそ書ける性って何だろうと考えたとき、経験だな、と。妊娠・出産を経験した私にしか描けない物語があると信じて書きました」

受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』は多くの人の共感を得た。映画化もされ、窪さんの人生は2倍のスピードで走り始める。

「二人分の人生を生きなくちゃ」

本の編集の仕事でお世話になったマタニティスイミングの先生の言葉です。先生も子どもを亡くした経験がありました。この言葉で、私は小説家になろうと思いました。

がさつでもぐうたらでもずぼらでも、機嫌よく!

二人目の子どもは元気に育っていった。それでも窪さんは、「いつか死んでしまうのではないか」という不安に襲われ続けていたという。

「手洗いやうがいはもちろん、部屋中を消毒して、ものすごく神経質な子育てをしていたんです。でも、伊藤比呂美さんの本で出合った『がさつぐうたらずぼら』という言葉が心に響きました。部屋が多少汚くても、洗濯物が山積みでも、母親が心身ともに健康で、子どもが機嫌よくいれば、ちゃんと育つんだと思えました」

子育ても、周囲の支えがあって乗り越えた。
「取材が夜遅くになることも多かったんですが、同じ保育園のママが息子を『預かってあげるよ』って。取材が終わって迎えに行くと、息子は夕食もお風呂も終わっていて、あとは寝るだけ。本当にありがたかった。私も何かあれば預かって助け合いました」

血縁関係はなくても確かな信頼がそこにある……窪さんの作品にはそんな人間関係がしばしば登場する。
「血縁以外の人の影響も子どもには大事なんじゃないかな。息子はそうやって育ってきたからか、人に対して心を閉ざすことのない人になっています。今はもう独立していますが、たまに会うと仕事の話ができるいい関係です。たぶん……(笑)」

「がさつぐうたらずぼら」

詩人の伊藤比呂美さんの本に幾度も出てくる言葉です。神経質に子育てをしていた私にとても響きました。不安に襲われそうになったとき、お経のように「がさつぐうたらずぼら」を繰り返しました。

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