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原田ひ香さんが描く、元キャバ嬢と元不動産投資家の投資版マイ・フェア・レディ⁈『老人ホテル』

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ゆうゆう編集部

お金をテーマにした作品が人気の原田ひ香さんの新刊『老人ホテル』を紹介します。訳あり老人たちが長逗留するビジネスホテルを舞台に、極貧生活に苦しむ元・キャバ嬢が生活力に満ち溢れた老人たちから生きるノウハウを学ぶ。まさに「投資版マイ・フェア・レディ」です。

『老人ホテル』
原田ひ香著

生活保護に頼る大家族の中で育った日村天使は、貧乏から抜け出したいと考え、資産家と噂される綾小路光子に接近していくのだが……。1760円/光文社

安いビジネスホテルに長逗留する高齢者

『三千円の使いかた』『彼女の家計簿』など、お金をテーマにした作品で、多くの読者の心をつかむ原田ひ香さん。新刊のタイトルは『老人ホテル』だ。

主人公の日村天使(えんじぇる)は、埼玉の大家族の中で育った24歳。祖父母も両親も、生活保護に頼り、自ら働こうとせずに暮らしてきた。

7人きょうだいの末っ子の天使は、16歳で家を出てキャバクラ嬢になる。そこで出会ったのが、キャバクラ店が入っているビルのオーナー、綾小路光子という老婦人だった。

数年後、天使は街で光子を見かける。「楽して金持ちになるため」に、資産家と噂される光子に狙いを定める天使。光子のあとをつけていくと、古びたビジネスホテルにたどり着く。そこは訳ありの老人たちが長逗留している「老人ホテル」だった。

アルバイトの清掃員としてホテルに職を得た天使は、光子への接触を始めるのだが……。

「きっかけは、ネットニュースの記事でした。九州にあるビジネスホテルの一室で、何年も長期滞在していた高齢女性が亡くなった。ホテルに知らされていた名前では身元が判明しない。滞在費はきちんと支払われていたし、部屋には約750万円の現金が残されていたそうです。

地方のあまりお客さんが来ないようなビジネスホテルに、高齢の方が老人ホーム代わりに住むケースがあるのだと知って驚きました」

高齢者のホテル暮らしと聞くと、優雅なイメージがあったという原田さんだが、「こういう住まい方があったのか」と気づかされたという。

「老人ホームに入って過剰な世話を受けるのは嫌だ。でも、人知れず亡くなって、迷惑をかけたくない。そう考える人にとって、ホテル暮らしは、ある一定のお金があれば可能だし、掃除や多少の身の回りのことをしてもらえる。なかなか快適なのではないかと。侘しい悲しいというのではなく、羨ましいと思いました」

「老人ホテル」には、過去を背負った高齢の面々が暮らしている。彼らと関わることで、天使の人生も思わぬ方向へ進んでいくのだが……。

「生活保護に関する資料に、家族代々生活保護を受けている事例がありました。そうした家庭で育つ子は、大人の働く姿を身近に見たことがなく、働くこと、資産を持つことが必要だとわからない。そんな若者たちと老人たちを絡めたら、『裏のマイ・フェア・レディ』になるかなと思ったんです」

天使が光子から自活のノウハウを授けられていく、その具体的な展開は、物語を読んでのお楽しみだが、原田さんの小説には、たびたびこうした世代差がある者同士の関わり合いが描かれる。

「一方的に何かをしてもらう、してあげるというのではなく、ギブ&テイクの関係が築けるのは、ちょっとした理想ですよね」

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