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白井法子の「イギリス流 植物のある暮らし」

【英国流ガーデニング】春咲きの球根、スプリングジェムは早春の宝石。スノードロップやアイリスを楽しむ

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白井法子

ガーデニングの本場イギリスでは、庭を作ることや植物を育てることは生活の一環であり、習慣のようなもの。イギリスで暮らし、各メディアにも記事を寄稿しているガーデンライターの白井法子さんが、現地からガーデニングにまつわるコラムをお届けします。

春咲き球根は時に「スプリングジェム〜春の宝石」と呼ばれます(早咲きのものもあるのでウィンタージェムと呼ばれることも)。スノードロップやクロッカスのように、花自体は小さく、花期は短くても、冬景色の中で宝石のようにキラキラと輝くのがこう呼ばれる理由。自然が創り出す美しい色、そして、神秘的な模様は、庭の中で樹々の葉や宿根草が動き出す前だからこそ、より楽しめます。

ナチュラライジング

写真はクロッカスローン。クロッカスはイギリスに自生しているわけではありませんが、できるだけ自然に見えるよう、芝生にランダムに植えるナチュラライジングと呼ばれる手法です。フジ色の早咲き、Crocus tommasinianus(クロッカス・トムマシニアヌス)は、イギリスでは「トミー」という親しみやすい名前で呼ばれ、もっともナチュラライジングに向く品種だと言われています。どんどん増えるうえに、オープンフォーム(花びらがしっかりと開く形状)なので、ハチなどのポリネーター(送粉者)にもやさしくて人気。クロッカスには様々な園芸種がありますが、芝生の中では、あまり大きな花は目立ちすぎるため、ナチュラライジングする場合は、比較的小さめの花がおすすめ。また、クロッカスローンの芝生は、冬になり湿り気が多くなる前の晩秋に短く刈っておくのが秘訣です。

純白の花嫁 スノードロップ

初めてイギリスにスノードロップが紹介されたのがいつかは確実な記録が残っていないようですが、2つの説があるようです。「聖燭節(キリスト生誕から40日目に当たる2月2日)の日、器にスノードロップをたくさん入れておくと、純白の花が家を清めてくれる」という言い伝えから、修道僧がイタリアから持ち帰り、16世紀初頭にはすでにイギリスでオーナメンタルプランツ(観賞用植物)として育てられていたという記録があるようです。
その一方で、クリミア戦争(1853-1856)の際、イギリス人兵士が戦場に咲くスノードロップを見て、あまりにもきれいだったので自国に持ち帰り、それがきっかけで19世紀半ばのヴィクトリア朝時代に流行したという説も。
いずれにしても、真っ白な花で人々を魅了するスノードロップ。スノードロップの学名であるGaranthus (=ガランサス)とPhile(=を愛する人)を掛け合わせた造語から、スノードロップにはまっている人々はGranthophile(ガランソファイル)と呼ばれています。

水彩画のようなアイリス

ミニチュアのアイリスは、花期は短いものの、その美しい姿で、冬の寒さを忘れさせてくれます。中でも、この‘キャサリン・ホジキン’はイギリスでも根強い人気。グレーがかったペールブルーの花に黄色のマーキングは、まるで水彩画のようです。

イギリスの春を象徴する花

スイセンの学名のNarcissus(ナーシサス)は、ギリシャ神話に出てくるナルキッソスが語源と言われています。水面に映った自分に一目惚れし、口づけをしようとしてそのまま水死した場所にスイセンが咲いたことから、ナーシサスと呼ばれるようになったとか。早春になると、ガーデンセンターや植物ナーサリーはもちろん、スーパーマーケットにもスイセンが溢れ、窓辺に切り花を飾って、人々は春の訪れを待ちます。

パンケーキデー

スイセンが出回ると、「イースターの訪れ」を感じます。イースターとはイエス・キリストが蘇ったことを祝う復活祭。イースターにちなんだ行事の中に、子供たちが毎年楽しみにしているパンケーキデーがあります。
ちょっとややこしいのですが、これはシュローブチューズデー(懺悔の火曜日)の行事で、イエス・キリストが復活したといわれるイースターサンデーの46日前に当たるアッシュウェンズデー(灰の水曜日)から始まる40日間の断食に備えて、家にある卵やバター、小麦粉を使い切ってしまうための習わしです。レモンと砂糖(またはゴールデンシロップ)でシンプルに食べたり、クリームやチョコレート、フルーツをたっぷり飾ったり。カフェではもちろん、家庭でもみんなこぞってパンケーキを食べます。イギリスではキリスト教のしきたりが今も生活に十分反映され、子どもたちに引き継がれています。

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