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【舞いあがれ!】繊細な貴司が、日常生活の中から発見した温かい短歌をできれば見てみたかった

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田幸和歌子

舞ちゃんはどうなる⁉︎ わくわくしながら朝ドラを見るのが1日の始まりの習慣になっている人、多いですよね。数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。より深く、朝ドラの世界へ!

福原遥がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』の第25週「未来を信じて」が放送された。

今週は舞(福原)が東大阪のモノ作りを通じて「舞いあがる」ための準備を進める一方、貴司(赤楚衛二)の創作問題、舞と貴司の夫婦問題が描かれた。

「なにわバードマン」の先輩・刈谷(高杉真宙)と玉本(細川岳)の会社「ABIKILU」が取り組む電動小型飛行機「空飛ぶクルマ」を見た舞は、カーボン工場を紹介したり、「こんねくと」として事業提携することを決め、投資家を探したりと、大忙し。

それを後押ししてくれたのが貴司だったが、自身は短歌が詠めなくなり、苦しんでいた。ここにはいくつかの問題が見える。

一つは、「デラシネ」の店番と創作活動をする貴司の仕事が、「こんねくと」の仕事でずっと外に出ている舞に見えないこと。夫婦共働きで家事も育児も「やれるほうがやる」システムは一見合理的に見えて、一方が家で仕事をしている場合、実質的な家事・育児の負担は明らかに家にいる方に圧倒的に重くのしかかる。

結果、家事と育児のために限られた時間でパートタイムに出たり、家で仕事をしたりする女性などが抱える悩みが、そのまま貴司の悩みとなっている状況だ。だからこそ、結婚したばかりの頃、舞とめぐみ(永作博美)が「当番」を決めることを提案してくれたはずだったが……めぐみも舞も五島から東大阪に越してきた祥子(高畑淳子)の介護をしている様子は見えないが、家事分担は崩れたのだろうか。

とはいえ、もちろん「家事と育児」という物理的制限は、短歌が作れなくなった副次的な理由に過ぎないだろう。貴司はおそらく舞と歩と一緒に過ごす幸せな日々の中で、満たされてしまっているために、短歌が詠めなくなっている。これは北川悦吏子脚本×永野芽郁主演の朝ドラ『半分、青い。』で映画監督になる夢を諦められず、別れを告げた元夫(間宮翔太朗)の状況にも近い。

かつて短歌を詠むことで心が救われていた貴司は、それを「仕事」にしたことで詠めなくなり、蓋をしていた自分の本当の気持ち(舞への片思い)をさらけ出すことで、歌人として成功した。しかし、今度は幸せで満たされた日々の中で短歌を詠めなくなってしまう。歌人とはなんと苦しい職業なのだろうか。

貴司は舞に背中を押され、パリから絵はがきを送ってくれたデラシネの元店長・八木(又吉直樹)のもとに旅立つ。「生みの苦しみ」を伴わなければ創作活動ができない人というのは、実際、短歌に限らず、あらゆるクリエイティブな職業において多数いるだろう。

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