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【中野翠のCINEMAコラム】そのタクシーに乗り込んだのは、人生を振り返る92歳の老マダムだった!『パリタクシー』

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中野翠

ユニークな視点と粋な文章でまとめる名コラムニスト、中野翠さんが、おすすめする映画について語ります。終活に向かうマダムを乗せたパリのタクシー。彼女の依頼は、人生を過ごしたパリを一巡りしたいということ! オシャレおばあちゃんの話に惹き込まれていきます。美しいパリに浸れる映像も見逃せません。

マチュア世代に断然オススメの映画です。

タイトル通りパリのタクシー運転手と、偶然、乗り込んで来た品のいいマダム――。この二人の人生が愉快に、そしてさわやかに交錯するお話なので。

物語はこんなふう。パリのタクシー運転手のシャルルは懸命に働いて来たのに、運が悪く、今や免停寸前。家族に合わせる顔が無いと意気消沈していたのだが、ある日のこと、偶然、老マダム(92歳!) が乗り込んで来る。

マドレーヌという名のその老マダムは、ひとり暮らし。医師から介護施設への入居をすすめられたという。考えたあげく、施設への入居を決断。入居する前に、長い人生を過ごしたパリに別れを告げたくて、パリの街をタクシーで一巡りしたいと思ったのだった。

思い出の地を次々と訪ねてゆく中で、老マダムの長い人生のドラマが、しだいに明らかになってゆく。運転手と乗客という立ち場を超えて。二人は長年の知り合いのような、打ちとけた関係になってゆく。そして......という話。

二人の会話は、明朗なトーンで語られているものの、老女は少女時代にナチスのパリ進攻も米軍のパリ解放も体験している。17歳で米兵とファースト・キスをしたという。「ウィスキー味のキスが好き」とサラッと言う92歳。運転手シャルルは、すっかり、この老女の話に惹き込まれてゆく......。

というわけで、全編、ほぼ二人芝居なのだが、窮屈さは感じられず。すっかり、打ちとけた二人。 脚が弱った老マダムに、やさしく付き添う中年男シャルル。パリの街を走り回り、クラシックなレストランに立ち寄って食事を共にする場面もあり。

このオシャレおばあちゃん、タバコを喫う場面もあり。さすがフランス。アメリカ人と違って、「健康康第一」より、人生を味わい楽しむことの方が好きらしい。このおばあちゃんを演じたリーヌ・ルノーの実年齢は、なんと1923年生まれ、撮影時92歳だったという。

『パリタクシー』

● 監督/クリスチャン・カリオン 出演/リーヌ・ルノー、ダニー・ブーン 他 4月7日より新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町 他 全国公開(フランス 配給/松竹)
©2022 UNE HIRONDELLE PRODUCTIONS,PATHE FILMS, ARTÉMIS PRODUCTIONS, TF1 FILMS PRODUCTION

※この記事は「ゆうゆう」2023年5月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のため再編集しています。

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