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72歳・紫苑さんの安くて体にいい自炊生活。60歳から始めた節約生活が、新しい世界を開くきっかけに

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マチュアリスト編集部

小さくて自由な暮らしを楽しんでいる女性に、今、注目が集まっています。自身の価値観を大切にして、心地よい毎日を送っている方たちを紹介する『60代からの小さくて自由な暮らし』(主婦の友社)から、紫苑さんの元気の秘訣を2回にわたって掲載します。まずは前編です。

profile
紫苑さん
東京都在住。72才。フリーライターとして30 年以上活躍。58 才で始めた着物ブログが人気となり、現在は節約生活を中心とした情報を発信中。著書に『71歳、年金月5 万円、あるもので工夫する楽しい節約生活』(大和書房)、『72歳ひとり暮らし、「年金月5万」が教えてくれたお金との向き合いかた40 』(マガジンハウス)がある。
ブログ「ひとり紫苑・プチプラ快適な日々を工夫」
https://blog.goo.ne.jp/sionnann

長年フリーランスとして働いていたことから年金受給額は月5万円。この厳しい現実に嘆くどころか「今がいちばん楽しい」と、はつらつと答えてくれた紫苑さん。そのポジティブな考え方の根底には、ここ数年の節約生活で培った健やかな心身がありました。

「フリーランスという不安定な収入。それに加え、ひとりで子ども2人を育てていたため、常に漠然とした不安がありました。育児や自分の老後にかかる金額を数値化してしまうと、意気消沈するばかり。だからあえて見て見ぬふりをして生きてきたというところもありますね」

その不安が現実化したのは紫苑さんが60才を迎えてから。そのときの住まいである公団住宅の家賃を払い続けることが負担になってきたのだそう。

「悩んだあげく、64才のときに貯金をはたいて築40年の中古住宅を購入しました。一軒家を選んだのは管理費も修繕積立費もかからないから」

月々の家賃はかからなくなったかわりに貯金はなくなり、生活もギリギリ。そこに新型コロナウイルスが襲ってきて仕事が激減。ついに「年金月5万円」という現実に向き合わざるをえなくなりました。

月ごとの固定費をざっと算出してみると、ガス・水道・電気の光熱費が1万円、固定資産税・健康保険・介護保険・NHK受信料などの積み立て費が1万円、通信費が1万円で合計3万円。残った2万円が食費と交通費、医療費、生活費となります。そこで食費を1万円に設定して暮らしてみることに。このとき自らに課したのは、健康のために自炊して一日3食きちんと食べること。

「最初は1回の買い物に2000円ほど使っていましたが、それが1000円になり、買い物のコツをつかんだ今は、足りない食材を買い足すスタイルに落ち着いています。やってみてわかったのは、体にいいものは安価であるということ。満腹感も充実感もありながら、しかも長年悩まされていた過敏性大腸炎がこの食生活を送るうちに治ってしまいました。以前は調子が悪くなると年のせい、体質のせいなんて思っていたんですが、ほかでもない生活習慣のせいだったんですよね。体が元気になると、不思議とやる気も湧いてきて日々が楽しい。少ないお金でいかに生活を充実させるかを工夫することは、とても知的で創造的なこと。刺激を外に求めるのではなく、パッチワークのように自分色の日々をつないでいきたいです」

節約生活は「あるもので工夫する」のが紫苑さん流。窓にかけたカーテンとその下に置いてあるハタキはブルー系の服のハギレやふきんをつなぎ合わせたお手製。

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