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88歳 現役医師 帯津良一さんが語る「幸せは人生の後半にあり」

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帯津良一

だれにでも等しく、老いはやってきます。年齢に応じた楽しみや味わいをかみしめていけるなら、どんなにいいことでしょう。話題の新刊『にこにこマンガ 88歳現役医師のときめいて生きる力』から、「人生の幸せは後半にあり」という帯津良一さんのアドバイスをご紹介します。

ナイスエイジングのすすめ 老いを楽しむ

ひと頃、アンチエイジングという言葉がもてはやされました。老いに抗うという意味なのですが、正直、私は違和感を覚えていました。

あれやこれやとがんばって、少しくらい年齢より若く見えたとしても、所詮は徒花(あだばな)、すぐに追いつかれて年相応になるものです。

そもそも、老化は自然の摂理です。どうあがいたって老いはやってきます。いたずらに若さを誇るよりも、“老い”という雄大な流れに乗り、年齢に応じた楽しみや味わいをかみ締めていくほうがずっといいと私は思うのです。

そこで、老化を認めたうえで、楽しく抵抗して老いを少しでも向こうに追いやる「ナイスエイジング」を提案することにしました。ちょうど『週刊朝日』の連載でこの言葉を使ったところ、思ったより好評で「ナイスエイジングのすすめ」というテーマで1年間連載することになりました。

「ナイス」には「好ましい」「みごとな」という意味があります。広辞苑の例文には「ナイスミドル(魅力的な中年男性)」という言葉が紹介されていました。ナイスミドルを経て、小気味よく年をとるナイスエイジングに至るなんて、幸せな後半生の生き方ここに在り、ではないでしょうか。

幸せは人生の後半にあり

日本人がいまよりずっと短命だった江戸時代に、83歳まで生きた貝原益軒(かいばらえきけん)は、自身の著書『養生訓』で、幸せは人生の後半にあると書いています。80歳を超えた私も大いにそう思います。

貝原益軒は「人は50歳にならないと後悔することも多く、人生の道理も楽しみもわからない」と述べています。寿命が延び、人生100年時代を迎えようとしている現在、50歳からの人生の後半は、まさにみのりを収穫する、実に充実した時期と言えるでしょう。

ただ、それと同時に老化がひたひたと忍び寄ってくる時期でもあります。この老化といかにつきあうかが、人生の後半が幸せなものになるかどうかの分かれ道になってきます。

この“ひたひた”という言葉で私が思い出すのが、臨済宗の中興の祖である白隠(はくいん)禅師が描いた布袋姿の「すたすた坊主」です。腹がぷっくりとふくれ、右手に笹の葉のようなものを掲げ、左手には酒桶のようなものを提げて、すたすた、すたすたと歩くすたすた坊主。私はこの姿が老化の化身のように思うのです。私のこれからの姿、というふうに感じているのかもしれません。

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