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親の認知症に気づいたら、チェックリスト。親の気持ちと家族の心がまえを医師が解説

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マチュアリスト編集部

親に医療機関の受診をすすめるには

認知症に関しては、医療機関の受診をためらう人は少なくありません。とくに認知症の初期の人は、精神科や精神神経科に行くことに強い抵抗を示す傾向があります。親本人が自発的に受診を希望するなら問題ありませんが、そういうケースは稀。「私は病気ではない」と受診を拒否するケースが圧倒的に多いようです。

親に受診をすすめるには工夫が必要です。まずは、「もの忘れ外来」「老年科」「神経内科」などで一般的な受診を受けて、その延長として認知症の治療に移行する方法があります。

次に、家族が「わたしの健康診断につきあって」と言って誘う方法。あらかじめ医療機関に伝え、うまく対応してもらうようにしましょう。

頭痛や腹痛など体調不良を訴えたときに、かかりつけ医を受診する方法もあります。医師に、あらかじめ「もの忘れが進んでいるので、先生から検査を受けるようにすすめてください」とお願いしておくこと。日頃から信頼を寄せているかかりつけ医にすすめられると、検査に応じる人が多くいます。

訪問診療をしている医師がいたら、事情を説明し、血圧をはかっているときなどに問診をしてもらうとスムーズです。

自分の言うことを聞いてもらえそうになかったら、兄弟姉妹や友人や同僚、ホームヘルパーやケアマネジャーなど、第三者に誘ってもらう方法もあります。そばにいない人からの誘いには応じる場合もあるからです。

受診する日に子どもが気をつけたいこと

まず、早い段階から受診日を言わないことです。早く言ってしまうと、本人が落ち着かなくなって眠れなくなったり、当日に「行かない」「そんな約束はしてない」と言い始めたりすることがあるからです。

受診日は知らせず、当日に「いっしょに行こう」と誘うのがよいでしょう。

当日になって「行かない」となったときは、無理をせず、医療機関に事情を話してキャンセルを。本人が落ち着いたところを見はからい、受診をすすめるのがよいでしょう。

付き添いは、親がいっしょにいて安心できる人がいいでしょう。親の日ごろの生活ぶりや最近の変化について、医師にきちんと説明できる人が行くとスムーズです。

また、受診の手続きやお会計を待っているときに、親がひとりになると落ち着かなくなりがまんできなくなることがあります。そのため、付き添いは2人が理想。ひとりが手続をしているとき、ひとりは親の相手をするとよいでしょう。

診断のあと、医師の説明がよくわからなかったりするときは、遠慮なく質問しましょう。

受診の日は、親は心身ともに疲れています。いっしょに実家に帰り、親のことを見守りましょう。

認知症という診断を、親に告知したほうがいい?

親に認知症であることを話すかどうかはとてもデリケートな問題です。

親本人が働き盛りの場合は、告知しないと、仕事や家庭で問題を抱えることが多くなります。車の運転をしている人なら、やめてもらうために告知が必要になるでしょう。

親が高齢で、理解力や判断力が低下して、ゆったりとした生活を送っている場合は、あえて告知をする必要はないかもしれません。

なかには告知によって、想像よりも大きく不安が増したり、将来を悲観したりすることもあります。親の年齢によっては、診断する医師に「年齢のせいか、もの忘れが進んでいるようですので、治療をしましょう」などと説明してもらう方法も。

いずれにしても、家族のサポートが必要です。受診前に医師に相談してみるのもよいでしょう。


※この記事は『親の認知症に気づいたら読む本』杉山孝博(主婦の友社)の内容をWeb掲載のため再編集しています。
※2022年10月21日に配信した記事を再編集しています。

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【親の認知症に気づいたら】イライラしないコツは、完璧な介護を目指さないこと
監修者

川崎幸クリニック院長

杉山孝博

川崎幸クリニック院長。1947年愛知県生まれ。東京大学医学部附属病院で内科研修後、地域医療に取り組むため、川崎幸病院(神奈川県川崎市)に勤務。1981年より「公益社団法人認知症の人と家族の会(旧・呆け老人をかかえる家族の会)・神奈川県支部」の活動に参加、現在、同会副代表理事、神奈川県支部代表。往診・訪問看護を中心にした在宅ケアに取り組み、「認知症をよく理解するための9大法則・1原則」「上手な介護の12カ条」を考案、普及。公益社団法人日本認知症グループホーム協会顧問や、公益財団法人さわやか福祉財団評議員、厚生労働省関係委員としても活躍中。主な著書・監修書に『よくわかる認知症ケア』(主婦の友社)、『認知症の人のつらい気持ちがわかる本』(講談社)、『認知症サポート』(学研)など多数。

川崎幸クリニック院長。1947年愛知県生まれ。東京大学医学部附属病院で内科研修後、地域医療に取り組むため、川崎幸病院(神奈川県川崎市)に勤務。1981年より「公益社団法人認知症の人と家族の会(旧・呆け老人をかかえる家族の会)・神奈川県支部」の活動に参加、現在、同会副代表理事、神奈川県支部代表。往診・訪問看護を中心にした在宅ケアに取り組み、「認知症をよく理解するための9大法則・1原則」「上手な介護の12カ条」を考案、普及。公益社団法人日本認知症グループホーム協会顧問や、公益財団法人さわやか福祉財団評議員、厚生労働省関係委員としても活躍中。主な著書・監修書に『よくわかる認知症ケア』(主婦の友社)、『認知症の人のつらい気持ちがわかる本』(講談社)、『認知症サポート』(学研)など多数。

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