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【親の認知症に気づいたら】症状が進んだ認知症の本人は、何を思う?どう寄り添ったらいい?

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更新日

マチュアリスト編集部

親の認知症を、受け入れていますか?

「以前とは全く違う母になってしまった」
「今の父はまるきり別人格みたいだ」
「いつも身ぎれいにしていたのに、だらしなくなってしまって……」
そんなふうに思ってしまうのは、子どもがまだ親の認知症を受け入れていないから。現実に受け入れることができない子どもは多いといいます。

かつての親のイメージに固執して、元どおりの親になってもらいたいと叱ったり、教えこもうとしたり、説教しようとしたりするのはやめましょう。何度言っても、注意しても、教えても、元の親に戻ることはありません。

子どもはイライラして振り回され、親もプライドを傷つけられてしまうばかり。いいことは何ひとつありません。

認知症になったという現実を認めて、それを受け入れていくことは、親にとっても子にとっても最前の道なのです。

昔の親のイメージにはこだわらないこと。そして、本人が今できることに目を向けて、それを支えていくことに心がけていきましょう。そうなると、親の状態もよくなり、子どもの気持ちもラクになるはずです。

親を説得しようとするのはNG

認知症の人は、ひとつのことに集中すると、そこから抜け出すことが難しくなる傾向があるといわれます。

たとえば、毎日買い物に出かけて同じものを買ってくる、夕方になると出かけようとする。こうした親のこだわりに対して、やめるように説教しようとしたり、説得したり、禁止したりしても、効果はありません。

本人がこだわる原因や理由について考えてみて、思い当たることがあれば、それを取り除くようにする方法はあるでしょう。

または、別のことに関心がいくように、さりげなく話題を変えてみる、という方法もあります。

とにかく、親を説得したり否定したりしないこと。これは鉄則です。

大きな問題がなければ、そのままにする

認知症のなかには、そばにいて親身に世話をしてくる人の言うことを聞かず、拒否したり非難したりする人がいます。身近な人に暴言を吐いたり、激しい症状を見せることがあります。

これは、本人が最も信頼している人に対する甘え。敵意をもっているわけではありません。

認知症の人の症状や状態をなるべく軽くしようと努力する家族がいます。特に認知症の初期はそういった傾向があるようです。

ただ、そううまくはいかないもの。本人に何かを教えようとしたり、改善させようとしても、かえって本人の状態を悪くしてしまうことがあります。本人は家族の思いがわからず、ストレスを感じてしまうのです。

家族もイライラしますが、ここでひとつ、発想の転換をしてみませんか。本人が不快でなければ、そのままでいいじゃないか、と。

「真冬でも薄着で、家族が服を着せてもすぐ脱いでしまう」
「お風呂に入るのを嫌がる」
「テーブルの下に落ちた食べ物を食べてしまう」

これらは、発想の転換で、次のように考えたらどうでしょう。

「本人が寒さを感じず、風邪をひかないなら、そのままでいい」
「本人が不快でないなら、お風呂に毎日入らなくてもいい」
「床をきれいにふいておけば、そこに落ちたものを食べてもおなかはこわさないだろう」

発想の転換ができれば、親も子もストレスがぐんと減るでしょう。


※この記事は『親の認知症に気づいたら読む本』杉山孝博(主婦の友社)の内容をWeb掲載のため再編集しています。
※2022年10月28日に配信した記事を再編集しています。

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川崎幸クリニック院長。1947年愛知県生まれ。東京大学医学部附属病院で内科研修後、地域医療に取り組むため、川崎幸病院(神奈川県川崎市)に勤務。1981年より「公益社団法人認知症の人と家族の会(旧・呆け老人をかかえる家族の会)・神奈川県支部」の活動に参加、現在、同会副代表理事、神奈川県支部代表。往診・訪問看護を中心にした在宅ケアに取り組み、「認知症をよく理解するための9大法則・1原則」「上手な介護の12カ条」を考案、普及。公益社団法人日本認知症グループホーム協会顧問や、公益財団法人さわやか福祉財団評議員、厚生労働省関係委員としても活躍中。主な著書・監修書に『よくわかる認知症ケア』(主婦の友社)、『認知症の人のつらい気持ちがわかる本』(講談社)、『認知症サポート』(学研)など多数。

川崎幸クリニック院長。1947年愛知県生まれ。東京大学医学部附属病院で内科研修後、地域医療に取り組むため、川崎幸病院(神奈川県川崎市)に勤務。1981年より「公益社団法人認知症の人と家族の会(旧・呆け老人をかかえる家族の会)・神奈川県支部」の活動に参加、現在、同会副代表理事、神奈川県支部代表。往診・訪問看護を中心にした在宅ケアに取り組み、「認知症をよく理解するための9大法則・1原則」「上手な介護の12カ条」を考案、普及。公益社団法人日本認知症グループホーム協会顧問や、公益財団法人さわやか福祉財団評議員、厚生労働省関係委員としても活躍中。主な著書・監修書に『よくわかる認知症ケア』(主婦の友社)、『認知症の人のつらい気持ちがわかる本』(講談社)、『認知症サポート』(学研)など多数。

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