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【虎に翼】寅子(伊藤沙莉)を否定したり逆に負かされたりする役どころの松山ケンイチの表情が豊かで、笑いを与えてくれる

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田幸和歌子

「虎に翼」第9回より(C)NHK

そもそもヒロインの伊藤沙莉自身が近年活躍する女優陣の中でも群を抜いて笑いの演技がうまい女優である。表情、動き、セリフまわし、なんなら声質までも、過酷な状況や怒り、あるいは悲しみも深刻になりすぎず、少し笑いながら共感できる役どころと演技であることが最大の武器ではないだろうか。距離の生まれそうなテーマに共感性をもたらせてくれるのは、伊藤沙莉の演技力とキャラクターによるところはあまりにも大きい。

さらに第2週ではお笑いコンビ・シソンヌが原告側、被告側の弁護士役としてコンビで法服姿で出演、裁判で対決する姿が描かれたところも、裁判で殺伐となりかねない空気を、どこかシソンヌの新作コントを見ているような贅沢な気分にすらなれる絶妙なやりとりで柔らかく包んで届けてくれる。

寅子たちが「課外授業」として傍聴した裁判では、夫の暴力が理由による離婚に伴い嫁入り道具の着物を取り戻せるかどうかが争われた。「夫は妻の財産を管理する」、現代の視点ではあまりにも理不尽な法律の内容が争点となる。判決がくだされ、妻の着物は取り戻されることになった。

大喜びの寅子たち、「裁判は続くが最後まで戦う」という妻の言葉に、法律は「盾とか傘とか温かい毛布とか、人を守るためのもの」と思いを新たにする寅子。だが、女子部の学友・山田よね(土居志央梨)は、「裁判には確かに勝ったが、あの女性の受ける扱いは変わらない」とクールに現実を見つめ、法律は「武器」だと位置付ける。

二人の法への解釈の違いだけでも、お花畑の甘い青春はどこにもないことが分かるだろう。この先も、笑いを散りばめ、少し柔らかくしてくれながら、女性が「生きる」ということを届け続けていくことは間違いないだろう。

今回のエピソードが放送されたタイミングでは、現実の世界で夫のDVなどを理由とした離婚にブレーキをかけてしまうような「共同親権」が可決された。もちろん制作時にそんなタイミングを測ることなどできるはずもない。あまりにもタイムリーな偶然のリンクには、何かを「持っている」ドラマであることを感じてしまわずにはいられない。

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