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【らんまん】出禁にした万太郎に、なおも拘泥し続ける田邊(要潤)の孤独の行方が気になる

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田幸和歌子

そんな中、寿恵子は質屋で見かけた新聞小説の内容に胸騒ぎを覚え、田邊の妻・聡子(中田青渚)のもとへ向かう。田口という教授が女学校の校長もやっていて、里江という女生徒に手を出したという内容を田邊家の話と見る野次馬たちは、「破廉恥!」と群がり、口々に罵る。このシーンには現代に通じる皮肉が幾つも込められている。

「高等女学校なんて作るから世の風紀が乱れる」と女子教育を否定する声と、高学歴でも女性の賃金は男性に比べて大きく劣る令和の現状とは、驚くほど変わっていないこと。

そして、家に投石され、怯える聡子の子を励ました、こんな言葉が、私達自身にも跳ね返ってくる。

「(あの人たちは石を)投げても良いと思っているのよ、自分たちは正しいと思っているから」「ほんとのことなんて何一つ知らないのよ、それなのに石を投げつける」

そんな中、帰宅した田邊は寿恵子に感謝するどころか、「あなたにとっては好都合でしたか」と皮肉を言い、身の振り方を考えろと言ったうえで、聡子に「毅然としていなさい。無教養な連中とはかかわるな」と命じる。しかし、寿恵子が田邊に言い放った「殿方のことは私と聡子さんには一切かかわりがありません」に触発された聡子は、寿恵子が自分の大切な友達だと言い、初めて夫に反発の声をあげるのだ。本作で様々な女性たちの間に、幾度も描かれてきたシスターフッド的要素が、ここに来て初めて聡子の自立心にもつながっている。

一方、万太郎は高知の山で植物採集に没頭する中、山奥で虎鉄(寺田心)に出会い、彼の案内で珍しい植物を発見する。この珍しい植物を調べるため、外国の書籍を取り寄せることになるが、苦しい生活の中でも寿恵子は「どうにかなります、いえ、どうにかします」と宣言。

子育てと家事、内職に忙しい日々を過ごす中、波多野(前原滉)と藤丸(前原瑞樹)が槙野家を訪れ、万太郎は二人を巻き込んで研究を進める。そして、とうとうその植物が新種で、新しい属の新しい科であると認定し、「ヤッコソウ」と命名。さらに虎鉄からたくさんの標本が送られてきて、万太郎は改めて一人ではなく、植物を通じて人とつながれることを実感するのだった。

絶望から始まった第19週。しかし、多くの人との関わりの中で立ち直り、歩き始めたその先に見つけた希望「ヤッコソウ」。その一方で、万太郎を出禁にし、なおも万太郎に拘泥し続け、「無教養な連中とはかかわるな」と言ってのける田邊の孤独の行方が気になる。

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