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【ブギウギ】りつ子(菊地凛子)のモデルとなった淡谷のり子の史実。歌の最中に出撃となった兵士たちが1人、また1人と敬礼して去った

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田幸和歌子

富山の慰問で、旅館の女中・静枝(曽我廼家いろは)と知り合う。夫を戦争で亡くしている静枝のような人のために歌いたいと思うスズ子は「大空の弟」を歌い、それを聴いた静枝の表情が和らぐ。

夫の戦死を「悲しくない」「誇り」と言い、涙も思い出も封印して感情をなくしていた静枝が、スズ子の歌で夫婦のやり取りを思い出し、笑うのだった。

「戦争」をこれまでの朝ドラとは異なる「うた」「エンタメ」をど真ん中に据えて描く強い覚悟や意欲は、本作の優れた点だ。

実際、年明けのたった2日間の放送で、スズ子とりつ子、羽鳥のそれぞれの「戦い方」が見事に描かれている。

しかし、その一方、予測もつかない大胆かつユニークな発想でワクワクさせてくれる羽鳥や、ブレることなく戦い続けるりつ子の方が、主人公に適していたのではないかという指摘は様々な視聴者から出ていた。

もちろん脇役が輝いているのは作品の大きな魅力の証であり、役者の力でもある。

だが、今回の展開で、史実を少々変えた意図的な味付けで「死と生」の対比をりつ子とスズ子に担わせたことを、淡谷のり子が知ったらどう感じるだろうか。

さらに、それが「スズ子=生きる力を与えてくれる」という、わかりやすいヒロイン至上主義に落とし込まれていく朝ドラあるある的構図には、個人的には若干モヤッとしてしまうのだ。

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