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【らんまん】田邊教授(要潤)の虫けら発言は、自身の誇りを自ら傷つけるものだっただろう

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田幸和歌子

バイオリンを弾き、シェイクスピアを原書で読み、様々な会合に出かけていた田邊は、一見豊かだが、不熱心な研究者だ。だが、国のお金で留学した恩を返すため、好きな植物の道に邁進するのではなく、政府に命じられる職責を果たすことばかりに心がとらわれて来たのだとしたら、あまりに寂しい。

万太郎と田邊の関係を見ながら、つい『ガラスの仮面』と北島マヤと姫川亜弓に重ねてしまう。好きなことのみに憑りつかれたようにひたすら打ち込んできた天才が、呼ばれるように様々な植物に出合い、息をするように植物を理解していくのに対し、遠回りに幅広い教養を身に着け、努力して手に入れてきたにもかかわらず、一番欲しいものだけ手に入らないという悲しみ。しかも、天才の周りにはいつもいろんな人が集まり、みんな笑顔になっていく。

そして、状況的には行き場を失い、絶望的なはずの万太郎のもとには、名教館の旧友・佑一郎(中村蒼)が訪ねて来る。万太郎の強さは、一人一人の良さを見つけ出せること、その力を借りることができる素直さで、田邊との一件を佑一郎に話すと、佑一郎は博物館に相談することを提案。教授が全てではない、「訪ねていくところがあるゆうことも、自分の宝じゃき」と万太郎の行くべき道を照らすのだ。

ちなみに、中村蒼の出演回数自体はわずかなのに、全くそう感じさせないのは、子役時代からのバトンタッチがスムーズかつ印象的だったこと、万太郎と共通の師匠・蘭光先生(寺脇康文)の教えが「淀川~ミシシッピ川」へとつながっているという胸アツのエピソード、そして久しぶりの再会ながら、ごく自然に縁側に膝が触れるように座る「幼馴染ならではの距離感」にあると思う。

そこから、万太郎は里中(いとうせいこう)のいる博物館に向かい、シーボルトの助手を務めた伊藤圭介の孫・孝光(落合モトキ)と出会う。実は伊藤は3代でトガクシソウを研究してきた人物で、田邊を「泥棒教授」と呼ぶのだった。同じ植物を巡り、争う人々の行方が、ますます気になる展開になってきた。

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