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【らんまん】田邊教授(要潤)の虫けら発言は、自身の誇りを自ら傷つけるものだっただろう

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田幸和歌子

朝ドラを見るのが1日の楽しみの始まりとなっている人、多いですよね。数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。より深く、朝ドラの世界へ!

【らんまん】田邊教授(要潤)の虫けら発言は、自身の誇りを自ら傷つけるものだっただろう

「らんまん」第70回より(C)NHK

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長田育恵作・神木隆之介主演のNHK連続テレビ小説『らんまん』の第14週「ホウライシダ」が放送された。

今週から後半で、主な登場人物もリセット。しかし、本作の場合、映らなくてもそこにいる・登場しない間も日々が積み重ねられていることを感じられるのが嬉しい。

万太郎(神木)と寿恵子(浜辺美波)の十徳長屋での新婚生活がスタート。しかし、寿恵子は、日が早く翳る長屋では朝早くに洗濯した方が良いという竹雄(志尊淳)の申し送りを受け、朝から住人たちと並んで洗濯をし、たちまち住人たちに馴染む。

万太郎は笑顔でいないとダメだということ、夜も寝ず食事もせずに研究に没頭してしまいがちであることなど、寿恵子が伝授された“トリセツ”の中に竹雄は今も確かにいる。一方、万太郎の身体を案じ、自分より長生きしてくれなきゃという寿恵子の言葉からは、モデルとなった牧野富太郎が90歳を超える長寿だったことのフラグが感じられ、始まったばかりの二人の日々なのに、どこか切ない。

一方、万太郎の植物標本が新種と認められ、注目される中、追い詰められていくのが田邊教授(要潤)だ。

万太郎が高知で採集してきた珍しい植物標本を、徳永(田中哲司)らに見せようとすると、田邊が制止し、今後採集した植物は最初に自分に見せるよう命じる。田邊の“横取り疑惑”の不穏な空気が漂う中、田邊は結婚祝いをしようと言い、自宅に万太郎と寿恵子を招く。

すると、田邊は寿恵子を田邊の妻・聡子(中田青渚)と共に別室で過ごさせ、万太郎にとある提案をする。それは、万太郎が新種の植物を見つけても自分で発表することはできないという「現実」を突きつけ、「私のものになりなさい」として田邊専属のプラントハンターになる提案だ。

植物の新種を見つけたいという同じ目標を抱きつつも、その動機が万太郎と田邊では大きく食い違っている。万太郎は「この子(植物)が好きで、誰にも渡せません」と、その思いを寿恵子への思いと重ねて語るのに対し、田邊には「植物の新種に自分の名前がつく」名誉や権力への渇望があるのだろう。そして、何者でもない万太郎に先を越された焦りがあるため、万太郎に拒否されると「小学校も出てない虫けらが! お前は私にすがるしかない!」と言い捨てる。

しかし、この下劣な発言は、本来「完璧なものしか美しくない」という美意識を持つ田邊自身の誇りを自ら傷つけるものだったろう。そして、名誉・権力への欲望に濡れたように見える田邊が、シダを愛する純粋な理由「花も咲かず種もつけず、地上の植物の始祖にして永遠」も見えてくる。世界の中で大きく遅れをとり、研究者も少ない植物学において田邊もまた国内では「始祖」にして「永遠」として懸命に学んできたのだろうか。しかし、それは万太郎の登場によって脅かされてきている。

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