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【ブギウギ】羽鳥を演じる草彅剛の宇宙のような存在感に目を奪われる。その軽やかさは異質だ!

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田幸和歌子

それにしても、草彅の軽やかさは異質だ。

銭湯帰りに家の前で待っていたスズ子にレッスンを頼まれ、夜のピアノを妻に禁止されているからと「面目な~い」と笑顔で謝り、妻が許可すると、一息つく間もなく「それじゃあ行きましょう、トゥリートゥーワン」と独特の拍子をとる。ネクタイも締められないと妻に言われると「人それぞれ不得手はありますよ」、しかしネクタイくらい締められた方が良いとスズ子にツッコまれると「そりゃそうだ」と相好を崩す。

ビシビシ鍛えてくれと言うスズ子には「ビシビシなんて嫌ですよ。僕は楽しくないのは嫌いだから」と言い、「福来くんにはもっともっともっともっとホットになってもらいたい」「楽しくなるための欲なら僕はとても深いですよ」と笑い、歌いながら歩く羽鳥。

そして本番当日、エア指揮をしながら鼻歌交じりで登場し、気合を入れて長いつけまつげをつけたスズ子を見ると「あ、凄いまつげじゃないか! いいなあ、面白い顔だ! こんな顔で歌うとは思わなかったなあ」と嬉しそう。もう、わけがわからない。

そこからスター・福来スズ子の誕生となる、情熱的で魂のほとばしるような見事なパフォーマンスがフルコーラスで披露される。

その趣里の歌い分けの変化、表現力も見事だが、目を奪われるのは、羽鳥を演じる草彅の宇宙のような存在感。常に全身でリズムをとっているような無重力のような軽やかさ、大阪出身で「郷に入りては郷に従う」標準語のためか、畏まった丁寧語と距離の近いタメ口が絶妙にミックスされる具合も、実に不思議なおかしみを与える。

草彅×趣里の才能と才能、狂気と狂気のぶつかり合いは、美内すずえの不朽の名作漫画『ガラスの仮面』の月影先生と北島マヤを見るよう。ちなみに、草彅剛の演技はかねてより「憑依系」と言われ、一部では「北島マヤみたい」とも評されていることを考えると、本作はW北島マヤ師弟の物語なのかもしれない。

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