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【ブギウギ】何よりホッとするのは羽鳥夫婦(草彅剛、市川実和子)や茨田りつ子(菊地凛子)が出てくる場面だ

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田幸和歌子

しかし、実際のところ、コテコテ芝居やトイレのくだりで笑う気にはならず、ホッとすることもない一方、何よりホッとするのは羽鳥夫婦(草彅剛、市川実和子)や茨田りつ子(菊地凛子)が出てくる場面である。戦時下で大変なのは誰でも同じ、そんな中でも自分らしくあろうと、自分なりの戦いを諦めていない人たちの懸命な「いつも通り」に、笑ったり、ホッとしたりする。戦争の描写の「明るさ」とは、顔芸やコテコテ芝居や下の話でなく、それで良かったんじゃないかという気もする。

ついでに言うと、「下」の話で距離が縮まり、愛助のスズ子の呼び方が「福来さん」から呼び捨てに変わり、キスするくだりがあったが、不思議なのは2人の関係性だ。なぜなら、空襲の際、スズ子を探すチズ(ふせえり)に、小夜が愛助のところだと答えると、「まったくもう、どっちに住んでんだかわかんないねえ」と呆れていたためだ。

どっちに住んでいるかわからないほど愛助の家に入り浸るスズ子に、ずっと「福来さん」呼びをし続け、キスもしていない愛助。それでいて、熱い思いを正面から伝えると「つばがとんだ」とツッコまれる愛助……。

直接的な表現はなくとも、艶っぽい空気や微妙な距離の変化から2人の関係性の変化を匂わせる朝ドラ作品も多数あった中、本作の2人の恋愛描写はかなり独特で、下世話な想像を掻き立てるのだ。

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