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萩尾望都の漫画『トーマの心臓』を久しぶりに一気読みしたら。「今読み返してもクラクラとときめくのだ」

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Anmitu

実はこの物語は難解、と言われている。その難解とされる理由は、罪や過失を犯す、犯した人を代償(トーマの絶対的無償の愛、自己犠牲)が捧げられることで赦し、赦されることができるのかという贖罪を縦糸に、3人の少年たちの複雑な家庭環境と成長を横糸に織り込んで物語がすすめられている点にある。トーマの手紙が意図する「ぼくはずっと生きている 彼の目の上に」とは? トーマに導かれるようにユーリに惹かれていくエーリックの心模様とは? ユーリの苦しみを知りつつ、何もいわず心が開くそのときを待つオスカーの心情とは? 生と死とは、正義とは、愛とは、孤独とは、救済とは……といった普遍的テーマを根底に、答えのない難題を突きつけて物語る。

何だかわからない難解だけであれば、少女たちは続きが読みたい、なんて当然思わないが、道理よりも真理をわかりたい、知りたいと思う嗅覚に働きかけ呼び起こし、マンガならではの数々の表現技法で望都さまは読者を引っ張っていくのだ。本当にひとコマたりとも、ひとセリフたりとも無駄がなく、緻密なプロットで最初のページからラストのページまでが計算された作品、もう凄い、としか言いようがない。

そして何といっても少年たちが美しい。男でも、女でも、少女でも、子どもでない。エロスと正義が拮抗するこのときだけの潔癖すぎるほどの完璧な愛、その真っ直ぐさから生じるめざめる直前の感覚的でありつつ理性的な、観念的であり実践的な愛の表現に、人間ドラマに、今読み返してもクラクラとときめくのだ。

*「  」内は、『トーマの心臓』より引用。

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