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読みだしたら止まらない! 山本一力さんが初めて挑んだ新感覚の「中国時代小説」

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ゆうゆう編集部

作家・山本一力さんの最新刊『亀甲獣骨(きっこうじゅうこつ) 蒼天有眼(そうてんゆうげん) 雲ぞ見ゆ』。中国の歴史と文化に興味が尽きない、注目の一冊です。

『亀甲獣骨 蒼天有眼 雲ぞ見ゆ』
山本一力著

『潮』誌上に連載中の「蒼天有眼 雲ぞ見ゆ」シリーズの書籍化第1弾。清代の杭州を舞台に、金石学の徒・丁仁(ていじん)が生薬「竜骨」に刻まれた文字の謎を追う。

潮出版社 2090円

縁に恵まれて、初の“中国もの”に挑戦

江戸時代を舞台に、市井の人々の物語を人情細やかに描いて、多くの愛読者をもつ山本一力さん。その山本さんが、初めて「中国の歴史もの」に挑んだのが、月刊『潮』誌上で連載中の連作「蒼天有眼(そうてんゆうげん) 雲ぞ見ゆ」だ。そのシリーズの書籍化第1弾『亀甲獣骨(きっこうじゅうこつ)』が、このたび刊行された。

主人公は、清代末期の光緒25(1899)年、杭州・西湖のほとりにある孤山に暮らす数え年21歳の丁仁(ていじん)。金石学の研究に取り組む一族に生まれ、やはり金石学者である父の後を継いで、学究に打ち込んでいる。金石学とは、古文研究の一分野で、古代の青銅器や石碑などに刻まれた銘文や画を研究する学問のこと。

ある日、丁仁は生薬である竜骨に、神秘的な図形や文字のようなものが刻まれていて、それが北京で騒動になっていることを知る。骨に刻まれているものは何なのか。丁仁は探求心を抑えられなくなっていく。

山本さんは言う。

「中国は自分には全く縁のない分野だと思ってきました。一つには、今の中国の政治のあり方にどうしても納得できないということがある。それに何といっても文壇には、中国にすごく詳しい方が数多くいらっしゃる。自分にはやれるわけがないという気持ちが根っこにありました。

それが出版社から『山本一力という物書きが、どんな中国ものを書くのかぜひ読んでみたい』とオファーをいただいた。無理だと思ったので、いったんはお断りしました。でも、出版社から帰る電車の中で、『あそこまで言ってもらった話を、狭量なことで断るのも情けねえな』と思い直しました。それで『さっきはお断りしたけれども、ぜひやらせてもらいます』と電話をしてお引き受けしました」

不安を抱えながら連載をスタートさせた山本さんを、中国に詳しい2人の編集者が、しっかりサポート、バックアップしてくれた。

「編集者っていうのは、言ってみれば『縁の下』で作家を支えてくれるんだよね。中国に関する本当に深い知識をもちながら、彼らはそれをひけらかさない。常に後ろに控えていて、ほどよく助言や提案をしてくれる。しかも、同じ方向を見て進んでいける人たち。だから、完成度を高められたと思う。やはり、人と人との『縁』が大事だよね。縁は、結ぶもほどくも人がやる。しかも、自分がやるんだよ」

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