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【家族疲れ】一日中家にいる夫がうっとおしい|ノンフィクション作家・沖藤典子さんがアドバイス

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ゆうゆう編集部

家族だからこそのストレスとどうつき合うとよい? 父や夫との関係に苦しみ、自身の壮絶な人生を多くの著書にしたためてきた沖藤典子さんにアドバイスをいただきました。

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PROFILE
沖藤典子さん

おきふじ・のりこ●ノンフィクション作家。1938年生まれ、北海道大学卒業。
15年間の会社勤めの後、79年『女が職場を去る日』(新潮社)を出版し執筆活動に入る。以後、女性の生き方や家族の問題、シニアの研究、介護問題などについて執筆や講演を続ける。
『夫婦という幸福 夫婦という不幸』(集英社)、『介護保険は老いを守るか』(岩波新書)など著書多数。

いろいろあるのが夫婦、家族。いい思い出が 一つでもあれば、それを抱えて生きていける

家名を継ぐ息子を望み、娘を一人の人間として認めなかった父。「沖藤の姓を名乗るよ。家事も育児も半分ずつの家庭を築こう」という言葉を信じて結婚。しかし夫は妻に一切手を貸さず、家族を振り回し続けた。この2人が沖藤さんを波瀾の人生へと導いた。

「父は家父長意識の塊でした。私はそんな父に愛されたくて大学に進学し、『姓と家事の分担』を言ってくれた夫と20歳で結婚。これが間違いの始まりでした。若かった私は2人の娘を抱え会社員として働き、家事・育児、仕事と家庭の板挟みになって苦しみました。夫は自分の仕事優先で酒ざんまい。運転免許を取ってと頼んだときも、『家族の運転手にはなりたくない』と言ったほど、家庭を顧みない人だったのです」

当時は「女は男に従うのが当然」「家事と育児を立派にこなしてこそ良妻」という時代。社会でキャリアを築いていく沖藤さんに、世間からの視線も厳しかったという。

「さらに夫は子育てにも問題があり、長女をかわいがらずに二女だけを溺愛。自然と私は長女を守る立場になり、そのせいで二女との間に深い溝ができてしまいました」

現在、長女は海外に在住。二女は隣の市に住んでいながらほとんど音信はなく、何かあっても頼ることはできない。「家族ストレスが途切れたことはない」と言う沖藤さんだが、そんな苦境をどのように乗り越えてきたのだろうか。

「今振り返っても、乗り越えたという意識はないんです。仕事で忙しくすることで直視しないようにしていただけ。父や夫に対する怒りがやっとおさまったのは、彼らが年老いてからなんですよ」

憎かった父も夫も今はいとおしい存在

「父は家父長意識の強い人でしたけれど、人生の最後にはいい思い出を残してくれました。あれほど威張っていたのに、晩年に同居を始めてからは、家事も孫の世話もしてくれるよきおじいちゃんに。父娘にとって最良の数年間でした。

夫は70代で病に倒れ、病により足を切断。最後は自宅介護になりましたが、その頃には驚くほど素直で優しくなったんです。今思えば、介護される身としての生きる知恵だったのかもしれませんね」

こんな自分にさえも家族のいい思い出がある。それなら飛び抜けて幸せな家族も、不幸せな家族もないのではないか――今、沖藤さんに浮かぶのはそんな思いだ。

「幸福な思い出が一つでもあれば、それはいい人生。人は思い出の珠を抱きしめて生きるものなんです。たとえ短期間であっても、私自身が家族に大きな愛を感じたことは、なんと幸せなことかと思います」

人生の大半を家族疲れとともに過ごしてきた沖藤さんならではの、深くしみる言葉。家族に怒りやストレスを感じたときは、一度思い出してみてほしい。

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