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【25歳・奇跡の長寿猫】が波乱万丈の人生を変えてくれた。その物語とは?

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マチュアリスト編集部

「勇気をもらえる」のは飼い主の村上さんも同じである。4月に発行となったフォトエッセイ『25歳のみけちゃん』の表紙には「あなたと生きる一日一日が愛おしい」という文言が書いてある。24年(みけちゃんを飼い始めたのは推定1歳)もの長きに渡りともに暮らす家族であるのだから、それも当然であるが、村上さんがみけちゃんと出会ってから人生が劇的に変わったことを考えると、その言葉の重みを感じざるをえない。

村上さんは、いつも笑顔を絶やさないきさくで明るい方だ。初めて顔を合わせたときから、おしゃべりがはずんで笑いが絶えなかった。その姿からはとても想像がつかないが幼い頃には児童福祉施設で暮らす時期があり、その後自宅に戻ってからも養母から激しい虐待を受け、小・中学校ではいじめに遭って育ったとのこと。中学卒業後は高校へ進学させてもらえず、飲食店で長く働いていたそう。

転機となったのは転職先の料亭での、現在のパートナーとの出会い。2000年に結婚し、村上さんは初めて自分の家庭を持つこととなるが、アパートで同居していた。前年の秋、6階にあったその部屋の開いていた玄関から、三毛猫が突然入ってきた。みけちゃんが村上さんの人生に登場した瞬間だ。

みけちゃんは部屋のソファに飛び乗り、そのままくつろいで寝てしまったとのこと。驚くのは村上さんもパートナーもそのまま受け入れ、この日からともに暮らし始めたことである。なんと大らかな夫婦! そしてその後すぐに村上さんの人生には大きな転機が訪れる。

その頃、村上さん夫妻は飲食店から独立して料理店を開くという決断をする。が、しかし店は閑古鳥が鳴き、わずか半年で閉店を余儀なくされてしまう。その時、預金通帳の預金残高はわずか数百円。すっからかんである。が、ここからの村上さんのポジティブパワーが素晴らしい。焼き肉店のパート従業員として働く傍ら、書店で見かけた『公募ガイド』誌から、賞金つきの童話コンテストに手当たり次第に応募を始めるのである。

これには不遇な少女時代に、教室にいられず家庭にも居場所がなく、ずっと図書室で本を読んでいた経験が生きてくる。何度も落選を続けてもくじけず応募し続けていると、ついに2001年、大手新聞社主宰の文学賞を受賞。2003年には児童文学作家としてデビューを飾る。村上さんは大学の文学部に属したこともなく、小説執筆の指導を受けたこともない。一介の焼き肉店のパートのおばちゃん(失礼!)が文学作家になったのだ。まさにドラマチックな人生の逆転ではないだろうか。みけちゃんが、村上さんに幸運を運ぶ天使であったことはもはや疑いようがない。

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