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50代は自分の機嫌を自分でとる。フォームローラーからミニチュアまで、中島京子さんに聞いた

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中根佳律子

中島京子さんはたぶん、ひとりでいることをとことんおもしろがるタイプ。自分の機嫌を自分で上手にとる方だと思うのです。ひとりめしを楽しんだり、健康器具や老舗銘菓のミニチュアにハマったり。中島京子さんの新刊『小日向でお茶を』(3月20日発売予定)には、共感したりまねしたくなるエピソードがたくさん詰まっています。ここでは、中島さんのインタビューから、日々を楽しく暮らすヒントをご紹介しましょう。

コロナの始まりからの3年近くを見つめる

2020年の早春、日本中が“新型コロナ感染症”の恐怖で覆い尽くされたころのことを、あなたは覚えているだろうか?

「あの年に咲いた桜のことが、今でもしみじみと心に残っています。こんな大変な時にも、桜は変わらずに咲くのね、と。本当に気持ちが慰められましたね」

『小日向でお茶を』は、2018年10月~2022年9月の雑誌『ゆうゆう』連載をまとめたエッセイ集。はからずも、コロナの始まりから収束が見えかけてくる時期までをカバーすることになった。

最初のころはアメリカでおいしいものを食べ、韓国でおいしいものを食べ、表参道でおいしいものを食べ……と、こちらも腰を浮かして飛行機に乗りたくなるような内容が続くのだが、コロナ禍でそれができなくなる。

出歩かず、人と交わらない暮らしの中で、体と気持ちを健やかに保つにはどうすればいいのか。未曾有の状況下で過ごす中島さんの姿は、しかしどこか楽しげでもある。

自粛中の自分の機嫌は自分でとる!

たとえば、円筒形で表面がボコボコした健康器具、フォームローラーにハマる。
「一連のゴロゴロを終えると、ものすごく寝つきがよくなり、翌朝は、人間の足に見える足が復活するのである」(いまや依存症? フォームローラーが好きすぎる)

あるいは、手作りマスクで苦手な裁縫に目覚めてしまう。
「意外に、楽しい。(中略)これは、なんというか、裁縫というほどのレベルのものじゃないからだろう。それでも、けっこう実用的で、一つ作ると達成感がある」(マスクあれこれ)

そうかと思えば、通販で老舗銘菓のミニチュアおもちゃを見つけて、ずきゅんとハートを打ち抜かれる。
「泉屋東京店・スペシャルクッキーズ、榮太郎總本舗・梅ぼ志飴&黒飴、浪花屋製菓・柿の種……うおおおお、やられた!」(ミニチュアが呼び覚ますあの「銘菓」の記憶)

多分、中島さんは一人でいることを楽しめるタイプなのだ。それはたとえば、こんな文章にも表われている。
「ひとりめしは必要だと思う。自分のことだけ考えて、栄養バランスも忘れて、ラクちんな、誰にも見せないごはんをひとりっきりで食べる時間を、ときどきは楽しみたいと思う」(ひとりで食べるごはんほどおいしいものはない?)

自分の機嫌は自分でとらなきゃね。
『小日向でお茶を』からは、中島さんのそんな心の声が聞こえてきそうだ。

コロナの前後で変わったこと・変わらないこと

本書の中に、とても印象的なエッセイがある。コロナで人の外出が減り、動物たちがのびのびしている様子を書いた文章だ。

奈良公園の鹿は満開の桜の下でのんびりと草を食み、沖縄にはジュゴンが戻ってきた。イギリスの街を占拠するヤギ、七面鳥の遊び場になったハーバード大学など、ユーモラスな動物天国の様子も語られている。

「コロナの経験は『人間は少しやり過ぎたんじゃないか、』という反省を生んだと思います。コロナの前と後とでは、何かが変わらなければいけないと思うし、実際に少しは変わったのかな、とも。自然といっしょに長続きしていける世界――いわゆるSDGs、持続可能な世界を目指すということですね」

人の力では簡単に太刀打ちできないことが起きて、人間は自然とともに生きているのだと痛感したこの数年。
「人間が中心じゃなくて、いろんなものといっしょに生きさせてもらう。そういう感覚を持った方は、多いのじゃないでしょうか」

自身の暮らしに置き換えれば、身近にある自然に敏感でありたい、と語る。
「自粛生活の中で、それまで縁がなかった観葉植物を育ててみました。そうしたら、“生きているもの”がいっしょにいる感じにとても癒されたんです。今度はベランダで野菜を作ってみようかな」

食いしん坊ぶりは、変わらないようだ。

撮影/川上尚見

中島京子さんプロフィール

1964年東京都出身。2010年『小さいおうち』で第143回直木賞 受賞。『かたづの!』で第28回柴田錬三郎賞、『長いお別れ』で 第10回中央公論文芸賞、『夢見る帝国図書館』で第30回紫式部 文学賞、『やさしい猫』で第72回芸術選奨文部科学大臣賞、第 56回吉川英治文学賞を受賞。その他、著書多数。

小日向でお茶を

中島京子著
主婦の友社刊

人気直木賞作家 中島京子初・グルメ、旅、自身の身の回りや体調の変化などについて、ユーモラスに語ったエッセイ集。雑誌「ゆうゆう」に5年にわたり、2018年から連載された「羊のところへはもどれない」に加筆し、時系列に1冊にまとめた。

詳細はこちら

中島京子さん 新刊発売記念【ミニトークショー&お茶会・サイン会】が開催されます

『小日向でお茶を』の刊行を記念して、中島京子さんの楽しいお話を、おいしいお茶とともに楽しむ限定イベントを開催! 心浮き立つスペシャルな春のお茶会へぜひ参加しませんか。

【イベントについて】
日時:4月2日(日)13:30~15:30 ※対面イベント
場所:目黒セントラルスクエア6階カフェ 東京都品川区上大崎3–1–1(JR目黒駅徒歩1分)
定員:40名(先着順)
料金:3800円(中島さんの新刊『小日向でお茶を』1冊、お菓子つき)

【お申し込み方法・締め切り】
イベントに参加ご希望の方は、URLよりお申し込みください。最大6名様までのグループ参加も可能です。今回は、ネットでのお申し込みのみとなります。パソコンやスマートフォンの操作が苦手な方は、ゆうゆう編集部までお問い合わせください。
締め切り 3月22日(水)23:59

お申し込みURL
https://peatix.com/event/3462609
【おみやげつき】
●新刊エッセイ本(1冊/サイン会あり)
●お菓子 お土産は、旅気分を味わえると大人気の、チェコのお菓子屋「ツックル」(日本で製造)のクッキーつめあわせを予定。他にも、目黒ゆかりの銘菓をご用意しています。お楽しみに!

【お問い合わせ】
ゆうゆう編集部 ☎03–5280–7402(平日10時~17時)

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