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親の介護が必要になったら、お金は?生活はどうなる?親が元気なうちから備えたいことを、井戸美枝さんがアドバイス

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横田頼子

制度を活用して、介護離職はしない

厚生労働省の雇用動向調査によると、2020年に介護離職をした人は約7.1万人。そのうち、男性は約1.8万人、女性は約5.3万人と、女性の方が多くなっています。年代別にみると、男性は「65歳以上」、女性は「55~59歳」が最多です。

親の介護をきっかけに60歳の定年前に離職する人もいますが、人生100年の時代、親を看取ってからも40年、人によっては50年ほどの長い老後が待っています。再就職先が見つからないと、老後破綻に陥る可能性もあるので、慎重になりましょう。

介護をしながら60歳の定年退職を迎え、その後も65歳まで再雇用で働き続けて、自分の老後を守ってほしいと思います。
そのために役立つのが、以下の2つの制度です。

介護休業制度

小さい子どもを育てている人が育児休業がとれるのと同じように、要介護状態の家族を介護している人は介護休業がとれます。

注意したいのは、ここでいう要介護状態は、介護保険制度の要介護状態と同一ではないこと。要介護認定を受けられなかったり、要支援の場合でも、「ケガや病気などで2週間以上常時介護を必要とする」なら、介護休業を申請できます。

対象となる家族の範囲は、配偶者(内縁を含む)、父母、祖父母、子、孫、兄弟姉妹、配偶者の父母。休業期間は、対象家族一人につき、3回を上限として、通算93日まで。つまり、必要に応じて、3回にわけて休業が可能です。

介護休業中、雇用保険の被保険者は、原則「介護休業給付金」が受給できます。給付額は、原則として、休業開始前の給与水準の67%(休業中に給与が出ない場合)。
取得できるのは、対象となる家族を介護する労働者です(日々雇用の人は除く)。

介護休暇制度

通院の付き添いや、介護サービスを受けるための手続き、ケアマネとの打ち合わせなどは、平日に行うことがほとんど。そんなとき、時間単位でとれるのが「介護休暇」です。

介護を必要とする家族が1人の場合は年5日、2人以上の場合は年10日を限度として、取得が可能。休暇中の賃金の有無は、勤務先によって異なります。
対象となる家族は、介護休業と同じく、配偶者(内縁を含む)、父母、祖父母、子、孫、兄弟姉妹、配偶者の父母。
雇用期間が6カ月未満だったり、日々雇用の人などは取得できません。

ほかにも、介護者が申し出た場合には、会社側は深夜(午後10時~午前5時)に労働をさせてはいけない、所定労働時間を越えて労働させてはいけない、などの規則もあります。

困ったときは、地域包括支援センターや担当のケアマネジャーなどに相談しながら、制度を生かして仕事と両立させていきましょう。

ワンポイント!「介護割引」やマイレージを貯めて、航空料金の負担を軽減

実家が遠い場合、飛行機での往復は料金が負担になりがち。各航空会社(日本航空、全日空、スタフライヤーなど)では、介護のための帰省などに、航空料金の割引が受けられます。

割引率は、日本航空の例で、各種チケットから10%割引。早期割引や往復割引などのチケットと組み合わせて使えます。ほかに、航空会社や便、チケットの種類で割引率が変わる航空会社も。自分がよく使う路線で、有利なものを選ぶといいでしょう。

適用されるのは、要介護または要支援と認定された2親等以内の親族などを介護する場合。条件は、マイレージクラブの会員であることなど。申請には、介護保険被保険者証、戸籍謄本または戸籍抄本などが必要です。

また、飛行機に乗るたびマイレージを貯めて、無料の特典航空券を利用するのもおすすめ。クレジットカードを搭載したカードなら、光熱費や通信費の引き落とし、ふだんの買い物の決済などでもマイルが貯まります。
詳細は、各航空会社のホームページで確認を。

プロフィール
井戸美枝
いど・みえ●ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、社会保険労務士、国民年金基金連合会理事。生活に身近な経済問題、年金・社会保障問題が専門。「難しいことでもわかりやすく」をモットーに、雑誌や新聞に連載を持つ。近著に『フリーランス大全』(エクスナレッジ)。『親の終活 夫婦の老活 インフレに負けない「安心家計術」』(朝日新書)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!増補改訂版』(日経BP)など著書多数。
ホームページ:http://mie-ido.com
Twitter:@mieido

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