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田幸和歌子の「今日も朝ドラ!」

朝ドラ【舞いあがれ!】なぜ柏木(目黒蓮)に貴司の短歌を聞かせる? 舞ちゃんの恋愛は正直、疑問符だらけ

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田幸和歌子

舞ちゃんはどうなる⁉︎ わくわくしながら朝ドラを見るのが1日の始まりの習慣になっている人、多いですよね。数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。より深く、朝ドラの世界へ!

東大阪で生まれたヒロイン岩倉舞(福原)が、長崎・五島列島に住む祖母や様々な人との絆を育みながら、パイロットとして空を飛ぶ夢に向かっていくNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』。

第11週まで来て、桑原亮子氏、嶋田うれ葉氏、佃良太氏の3人チーム制による脚本と、朝ドラの伝統である週毎に担当が代わる演出(チーフ演出・田中正氏、野田雄介氏、小谷高義氏、松木健祐氏)と、それぞれの作風の違いや相性が視聴者にもだいぶ把握されてきた。

第7週までは担当演出の違いがあまりわからないほどに桑原脚本が全体のトーンをコントロールしていたのに対し、分割画面×ベタ演出が大好きな8週目(嶋田脚本)・10週目(佃脚本)の野田氏、9週目(嶋田脚本)・11週目(佃脚本)の落ち着き&湿度高め演出の松木氏と、それぞれパズルのようで違いが面白い。

今週は舞と柏木(目黒蓮)の若さゆえの未熟さが見える一方、要所を締める脇の役者陣の巧みさが際立っていた。

発熱が治まり、訓練に復帰した舞だが、訓練飛行時間が不足していることを心配し、柏木(目黒蓮)は担当教官を代えてもらおうと言い出す。それに対し、舞は大河内教官(吉川晃司)を誤解していたかもしれないと言い、引き続き指導を受けることを希望するが、柏木は勝手に山下教官(板倉チヒロ)に相談に行っていた。暗闇のテーブル下で舞の腕をつかみ、一方的に自分の思いをぶつけただけで、彼氏気分になっている柏木がなかなか辛い。

そんな中、舞はフライト訓練で、急な天候悪化により、帯広ではなく釧路空港への着陸を指示される。しかし、そこに現れた大河内教官が並走飛行しながら舞を励まし、舞はセンターラインにのせてしっかり着陸することができた。「よくやった。これまでで一番の着陸だった」と労う大河内教官と、安堵で涙する舞。怖かったと振り返り、指導に感謝する舞に、大河内教官は「やり遂げたのは君自身だ」と励まし、「なぜパイロットになりたいか、思い出したか。目指すべきものはそこにあるはずだ」という言葉を贈る。

日頃コワモテで長身かつ姿勢が良く、威厳のある大河内教官が、学生に労いの言葉をかけるとき、目尻にしわが寄り、やや肩を落とした柔和な背中になる変化は、安心感抜群だ。

しかし、そんな余韻をかき消すように、駆け寄り、ハグする柏木……。男性CP×男性脚本×男性演出だと、視聴者のキュンの構造にどうも誤解があると思われるケースは朝ドラには多々ある(『あまちゃん』のように男性ばかりのチームで作られていても、女性の心理が繊細に描かれるケースは稀な気がする)。

ともかく、舞たちは最終審査に合格。帯広での訓練課程を終え、柏木は舞をデートに誘い、舞がなぜか貴司(赤楚衛二)が贈った短歌をデート中に披露。柏木が告白、舞もそれに応えたかと思えば、早速に帰省の際に柏木を連れて行く。

突然、浩太(高橋克典)とめぐみ(永作博美)に会わせながらも、柏木を「同期」「とても仲のよい友達」と強調。さらに、隣家の窓から貴司が顔を出すと、舞は短歌をいつでも見えるところに貼っていたと言い、露骨に貴司に対抗意識を見せる柏木が「舞のことは僕が支えていきます」と宣言する展開が描かれた。

舞の恋愛に関しては正直、「なんで柏木を好きに?」「なぜ柏木に貴司の短歌を聞かせる?」「なぜいきなり実家に連れて行く?」「連れて行ったのになぜ紹介しない?」などなど、疑問符だらけだが、若さというのはきっと理屈では説明できないものなのだろう。

その一方で、秀逸だったのは、舞と柏木が「うめづ」でお好み焼きを注文する間、別のテーブルで飲む浩太とIWAKURAの従業員、笠巻(古舘寛治)、章(葵揚)の芝居だ。

浩太にビールを注ぎつつ、もう20歳の舞に彼氏がいてもおかしくないと言う章を「アホ!」と強めにドヤしつつも、「いつもいらんことを」と浩太の思いに寄り添う優しいトーンで宥める笠巻。うめづ夫婦が二人を茶化す間、居心地が悪そうに首を掻いていたのに、梅津の店主・勝(山口智充)が「マヨネーズでハート描いたろか」と二人に言った途端、壁を拳で叩く浩太。そのピリつく雰囲気に、一瞬、体を硬直させ、片側の眉だけ上げてから笑う章の細やかな芝居の連携プレー。この3人のやりとりだけ別アングルで、未公開シーンも含めて楽しんでみたい気もする。

ともあれ次週からは桑原脚本が復活。様々な変化を経て、それらがどのようにつながるのか、あるいはつながらないのか、注目していきたい。

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