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俳優歴52年の小林薫さんが今思うこと。「今の若い人は芝居も感性もいい。僕らも彼らから学ばなくちゃ」

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ゆうゆう編集部

シリアスな作品からコメディまで、あらゆる役柄を演じては次々に私たちを驚かせ、楽しませてくれる小林薫さん。近年は主演作『深夜食堂』の大ヒットも記憶に新しいところですが、新作映画では一転、津軽塗の職人に。作品に込めた思いを伺いました。

わが子をあたふたと見守る、 そんな父親を演じて

唐十郎さんが主宰する状況劇場で、俳優としての活動を始めたのが1971年というから、そのキャリアは優に半世紀を超えた。さまざまな作品で、さまざまな役柄に挑んできた小林薫さんは、今なおその歩みを止めない。2010年以降のプロフィールを見ただけでも、年に平均2〜3本の映画に加えて、コンスタントにテレビドラマにも出演している。

「いやいや活躍だなんて、そんなことはないですよ。ただ仕事を続けられているのは、健康であり続けていることもひとつ大きな理由だと思うんですよね。僕らの仕事は、やはり現場で動かないと始まらない。これまでは、たまたま健康を維持できてきたので、それはありがたいとは思いますね」

そんな小林さんの最新出演映画『バカ塗りの娘』が9月1日に全国公開となった。「バカ塗り」とは青森の伝統工芸・津軽塗のことを指す言葉で、完成までに48の工程を経て「バカ丁寧に」作られることからそう呼ばれている。小林さんが演じるのは、そんな津軽塗の職人で、父親から継いだ仕事を地道に続けている、少々生きることには不器用な男だ。

妻には愛想を尽かされ、息子も後を継ぐことを拒否して美容師となり独立、今は堀田真由さん演じる娘の美也子と2人で暮らしている。美也子は、スーパーでパートをしながら父の仕事を手伝う日々。実はバカ塗りを継ぎたいと思っていることをはっきり言い出せずにいる。バラバラになってしまった家族はどこへ行くのか、全編弘前ロケ、心地よい静かなトーンの中で物語が進む。メガホンを取ったのは注目の若手、鶴岡慧子監督だ。

物語のひとつの核になるのは親子関係だが、単に「伝統」対「革新」、「受容」対「拒否」の対立軸だけで描かれるのではない、コミュニケーションの様子がリアルだ。

「子どもって、親が思っている以上に大人だと思うんですよ。親について『だからダメなんだよ』というところも冷静に見ている。そして親自身も子どもがそう見ていることを何となく感じているんです。そのときに頑固一徹で、上からただ否定するのは楽なんですよね。でも実際は親も揺れるだろうし、どうしていいかわからないところもある。この父親にもそういう揺れがあると思うんですね。仕事についても、自分自身は今までやってきたやり方を壊すことは難しい。しかし娘がそこを危なっかしいながらも超えようとしていく姿は見守る。そのときのあたふたぶりが親なのかなと思うんです」

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