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【ブギウギ】有能なのか役立たずなのか、わからない味わいがじわじわくる「福来スズ子とその楽団」の楽団員たち

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田幸和歌子

1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。毎朝元気をもらえる作品になりそうな「ブギウギ」で、より深く、朝ドラの世界へ!

【ブギウギ】有能なのか役立たずなのか、わからない味わいがじわじわくる「福来スズ子とその楽団」の楽団員たち

「ブギウギ」第50回より(C)NHK

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【ブギウギ】主人公を悩ませる「ダメ父」が、近年の朝ドラで幅を利かせる。梅吉(柳葉敏郎)はテルヲ(トータス松本)ほどではない

足立紳・櫻井剛脚本×趣里主演のNHK連続テレビ小説(通称「朝ドラ」)『ブギウギ』の第10週「大空の弟」が放送された。

1941年、歌う場所を失ったスズ子(趣里)は、茨田りつ子(菊地凛子)に触発され、自分の楽団を結成。そこに、「弟子志望」だった小夜(富田望生)が押しかけ、付き人になる。

しかし、敵性音楽を歌っていると言われ、警察に睨まれるスズ子の公演はなかなか実現できない。そんな中、出征中の六郎(黒崎煌代) の戦死の知らせが届く。その受け止め方の親子の違いが、それぞれにしんどい。

梅吉(柳葉敏郎)は、「死んでない」と言い、故郷の香川に帰って1からやり直すと言う。一方、スズ子はそんな梅吉に戸惑い、苛立ち、自分を家族としてカウントしていない梅吉に「ほんまの娘やないから」と寂しそうにつぶやく一方、仕事に打ち込もうとビラ配りや歌の練習をしようとするが、歌えなくなる。対照的に見える二人の行動は、実は「死」という事実から目を逸らそうとする意味で根本的には近いものだろう。

しかも、病を患い、衰弱していったツヤ(水川あさみ)の死とは違い、笑顔で出征した六郎の死の証は紙ペラ1枚だけ。突然命が消えた実感が持てないのも無理のない話で、それこそが戦争の残酷さだ。

そんな矢先、米英との戦争が始まり、人々は興奮し、活気づく異様な光景に戸惑いを見せたスズ子だが、不意に何かが切れたように明るく「万歳!」と叫ぶ。背筋が寒くなる表現だが、朝ドラ前作『らんまん』でも戦争を好機と沸き立つ人々が描かれたように、朝ドラにおける戦争の表現がかつてのステレオタイプなものから、近年は確実に変化していることを感じる。

一方、羽鳥(草彅剛)は歌う場所がなくなったスズ子とブルースの女王・茨田りつ子に、合同コンサートを提案。歌えなくなったスズ子に新曲『大空の弟』をプレゼントする。

合同コンサート当日。スズ子が歌ったのは『大空の弟』だ。

六郎の戦地からの便りを歌った戦意高揚の「軍歌」。しかし、「〇〇部隊」と伏字だらけの弟の手紙の虚しさと理不尽さへの怒り、悲しみが込められた壮絶な歌である。

これは2019年の神野美伽主演・白井晃演出の舞台『SIZUKO! OF BOOGIE~ハイヒールとまつげ~』の舞台製作の中で発見され、初めて披露された曲であり、今回ブギウギバージョンとして楽譜にできるだけ忠実に作られたという。

歌い終わって泣き崩れるスズ子。そんなスズ子を立ち上がらせたのは、六郎の幻と羽鳥の「しっかりしなさい」という優しくも強い言葉だった。そこから感情を爆発させたエモーショナルな『ラッパと娘』に、バンドの演奏も、観客も総立ち。

そんなスズ子のパフォーマンスに、泣き、笑い、梅吉も、六郎の死を受け入れ、新たな一歩を踏み出す覚悟を決める。

やっぱり香川に行くと言う梅吉に、スズ子は「情けのうてだらしない、何の役にも立たへんお父ちゃんやけど、寂しい。なんでやろう」とつぶやくと、梅吉は「決まってるやろ。親子やからや。当たり前やないか」。そして、梅吉は香川へ、スズ子は羽鳥から餞別としてもらった、後の代表曲『アイレ可愛や』を持って、地方巡業に旅立つのだ。

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