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長年続けてきた仕事を“卒業”したショコラさん。暮らしはどう変わった?

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池内かずこ

「おかれた場所で輝く人になる」と決めてパート勤務を10年。そして退職

長い間、仕事と節約を車の両輪にして暮らしを整えてきたショコラさん。40代で始めた化粧品メーカーの営業正社員は13年。57歳から呉服の卸問屋でのパート勤務は10年。通算23年間も携わってきた仕事をやめて、後悔したり、忘れ物をしたような気持ちになったりしなかったのでしょうか——。

「じつは、13年間勤めた化粧品メーカーの正社員をやめて、呉服の卸問屋のパート職に転じたときには、正社員の職をやめなきゃよかった、と後悔して半年くらい引きずっていたんです」

営業所長まで経験した責任のある仕事を離れて、ストレスが減った半面、パート先での“言われたことだけしていればいい”と軽く扱われる雰囲気にはなかなかなじめなかったといいます。

「お給料の金額や通勤時間まで条件を細かく絞り込んで選んだパート職でしたが、正社員とパートでは仕事へのかかわり方もお給料の面でもまったく違うので、落ち込んでしまって……」

そんなある日、ふと目にとまった新聞広告で、禅の教えを説く本の内容が箇条書きで紹介されていました。

「その一つが、“大地黄金”。“今いる場所で輝く人になりなさい”という意味があるというこの言葉に救われたんです。そうだ、おかれた場所で咲けばいいのだ、と。がんばっていたらそのうち任されるように。呉服の卸問屋で子供の七五三用の着物を取引先企業にレンタルする仕事なんですが、全国にある支社からの要望に合わせて、赤やピンク色など華やかな着物や小物を自分で選び、伝票を作って発送する、という一連の作業を担当して、売り上げもアップ。年金生活になる65歳までは働こうと考えていましたが、仕事がおもしろくてさらに2年続けてしまいました」

「今でも、思い出すとまたやりたくなる」というほど、熱をこめて仕事に向き合ってきたショコラさんですが、さすがに忙しすぎて体力的に厳しくなり、67歳で退職することに。

「週2日か3日でいいから続けて、と引き留められましたが、体力的に限界です、といって辞退しました。人生長いといっても、体が自由に動くのはせいぜい80歳くらいまででしょう。コロナで控えていた分、元気なうちにもっと旅行に行きたいし、今までできなかったことにも挑戦したい、という思いが強かったんですね」

リビングの窓辺に吊るしたグリーンは、マダガスカルジャスミン。白い花が咲くといい香りが漂います。ニトリで購入した小ぶりのハンギングプランターに。

そして、昨年3月、退職の日。
「やめるときに後悔するかな、寂しくなるかな、と思っていたんです。ところが退職の日、会社から1歩出たら飛び上がらんばかりにうれしくて。晴ればれした気持ちになりました。節約のおかげで老後の資金を少しずつ増やすことができましたし、仕事を精一杯やりきった、という充足感があったのです。その一方で、もしかしたらいろんなプレッシャーを感じていて、肩の荷がおりたのかな、とも思います。解放感いっぱいの勢いで、カフェでお茶して、記念に日比谷のショップで欲しかったお財布を買い、そのまま日比谷公園でお花見をしてしまったほどです(笑)」

そのお財布の使い方は、次回、ご紹介する予定です。

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