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【風来坊の猫の実話】信頼してくれてたんだね。自由気ままなクロが最期の場所に選んだのは

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マチュアリスト編集部

その後も1年に1度くらい、2〜3日姿を消すことがあった。
帰ってこないけど大丈夫かな、と家族が心配し始めたころに、ひょうひょうとした風情 で帰宅する。
今の私なら、「お前は寅さんか!」と突っ込んだに違いない。

ふらふらと自由な猫だったが、家族に対しては甘えん坊な面もあった。とくに母が家に いるときは、よくあとをくっついて歩いていた。
母は自分用の車を持っていて、パートや買い物などにはそれで出かけていた。帰宅して車から降りると、クロは庭にちょこんと座って「ニャーオンニャーオン」と鳴くそうだ。 母が何時に帰宅しても、必ず庭に座っている。そして、母の足元にまとわりついてかまってもらう。それが終わると、安心してまた散歩に出る。そんな生活をしていた。

父やほかの人の車ではそういうことはなかったので、母の車のエンジン音を聞き分けて いたらしい。クロが亡くなってもう30年近くたつが、母は今でもこのエピソードをよく話す。クロがそんなふうに特別扱いしてくれていたのがうれしいのだ。

とはいえ、クロは来客のお出迎えもしていた。自分が家にいるときに来客があると、必 ず奥から出てきて、「ニャーオン」とあいさつをするのだ。
豊かな毛並みと大きな体を持っていたクロは、「立派な猫ですねぇ」とお客さんにほめ られることが多かった。すると、どこかしら誇らしげな表情を見せるのだった。
機嫌がいいときはそのまま座卓に上って、お客さんにゴロゴロと腹を見せて、本人の思 うらしい〝かわいいクロ〟を演出していた。
ただ、気分が乗らないと、あいさつだけしてすぐに引っ込んでしまうのだった。

食べたいときにごはんをねだり、好きな時間に散歩に出かけ、眠りたいときに私の布団で寝る。クロは絵に描いたように自由な風来坊だった。

私は大学卒業後、就職に合わせてひとり暮らしを始めた。時折、実家に帰ると、クロは変わらない様子で「ニャーオン」と私を迎えてくれた。そして、夜は私の布団の上で大の字になって寝た。
年をとってきて寝ている時間が増えたものの、気まぐれに外に出かけて帰宅する習性は変わらなかった。

大きく状況が変わったのは、ひとり暮らしを始めて5年目のことだ。

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