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【大奥4話】イケズ返しの福士蒼汰と、悲しくも温かい母 斉藤由貴。脚本森下節が冴えわたる

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田幸和歌子

春日の父は織田信長を裏切った明智光秀の家臣・斎藤利三で、父が目の前で磔にされ、自分自身も1日1日を生き延びることに必死だった。だからこそ徳川家康に感謝しており、徳川家を守るため、再び戦国に戻さぬために、自らが鬼になって来たのだと言う。

有功を無理やり還俗させ、千恵との仲も引き裂いた春日だが、有功がその心情に寄り添うことで、春日は言う。

「あの日、わしは仏をさらってきたのじゃ。間違いばかりの婆であったかもしれぬ」そして有功に気の毒だったと言いつつも、「そなたをさらったことだけは間違いではなかった」と言い、国が亡ぶとして、最後の日まで千恵(家光)と一緒にいてくれと託すのだった。

このセリフは原作にはないオリジナルのもの。また、惨めな自分を見られて気分が良いだろうと憎まれ口をたたく春日に、優しい声をかけるのではなく、「厠へ一人でも行けない」とイケズを言ったうえで、「世話になっているとは思わず。私がしているのは嫌がらせですから」と相手の心を軽くしてあげる有功。このやりとりで思い出したのは、同じく森下佳子脚本の朝ドラ『ごちそうさん』だ。め以子(杏)は、自分にずっとイケズをしてきた小姑・和枝(キムラ緑子)の身の上に同情するのではなく、イケズ返しをし、「お互い死ぬまでイケズし合う」と約束することによって、再婚して家を去る和枝とこれからも交流し続け、2人なりの絆を育んでいったのだ。ザ・森下節が冴えわたる展開だ。

そして、かつては最も憎んだはずの春日の死に際し、「誰よりも苛烈で、誰よりも甘かった」と言い、自身の、この国の“母”としての春日を受け入れる千恵。自身も母になり、守りたい存在ができたことで、春日を理解することができたのだろう。千恵は徳川を、自身の娘が生きる国を守るため、女の家督を許すことを宣言。ここに「女将軍・家光」が誕生する。

少女から母になり、為政者になる千恵(家光)と、他者を支え、寄り添うことで自身の道を見出す有功、悲しくも温かい母としての春日と……森下佳子脚本による原作アレンジの巧さが際立つ第4話だった。

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