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【中野翠のCINEMAコラム】アキ・カウリスマキ監督の新作。 口数の少ない二人の 恋の行方は?『枯れ葉』

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中野翠

ユニークな視点と粋な文章でまとめる名コラムニスト・中野翠さんが、おすすめ映画について語ります。6年前に突然、引退宣言をしてファンを驚かせたアキ・カウリスマキ監督。復帰作となる『枯れ葉』は、孤独を抱えて生きる男女が、人生で最初で最後のかけがえのないパートナーを見つけようとするさまを描いたラブストーリーです。

アキ・カウリスマキ監督の映画にハズレ無し――と、私は思っている。

北欧、フィンランドの人で1957年生まれ。80年代から今にいたるまで、独創的でありながら多くの人の心をつかむ映画を作り続けて来た。『マッチ工場の少女』『ラ・ヴィ・ド・ボエーム』『浮き雲』『過去のない男』『白い花びら』『希望のかなた』など。

ハデにドラマティックな映画では無い。世間から少しはずれていたり、受け入れられなかったりする人たちの物語が多い。多くの場合、登場人物は口数が少なく、社交性に欠ける。そういうところ、日本人と共通しているように思う。親しみが湧く。

それもそのはず。アキ・カウリスマキ監督は日本の小津安二郎監督(1903~1963)の映画から多くを学んだようだ。とりわけ感情表現のつつましさ。

さて、今回の『枯れ葉』は、首都ヘルシンキに住む中年男女のラブストーリー。工事現場で働いている男・ホラッパ(ユッシ・ヴァタネン)と、理不尽な理由で職を失った女・アンサ(アルマ・ポウスティ)は、カラオケバーで出会い、互いに好意を抱く。

初デイトは映画館。ジム・ジャームッシュ監督の作品『デッド・ドント・ダイ』という渋好み。

ホラッパはアンサの気丈さに惹かれ、アンサはホラッパの明るさに惹かれた。さてこの二人の恋のゆくえは?……という話。

あれっ、結局、二人はそれだけの仲だったの?!と思いきや、はい、ちゃんと楽しいハッピーエンドになって行く。ひとごとながら(?)ホッとしました。

静かな、淡々とした映画ながら、「マンボ・イタリアーノ」やチャイコフスキーの「交響曲第6番」やジャック・プレヴェール(作詞)、ジョセフ・コズマ(作曲)の「枯れ葉」などが絶妙なタイミングで流れる。

口数の少ない二人だけれど、それだけに、互いの心のうちが十分に伝わって来るのだった。

『枯れ葉』

監督・脚本/アキ・カウリスマキ
出演/アルマ・ポウスティ、ユッシ・ヴァタネン、ヤンネ・フーティアイネン、ヌップ・コイヴ 他

12月15日よりユーロスペース 他 全国公開(フィンランド・ドイツ 配給/ユーロスペース)

© Sputnik Photo: Malla Hukkanen

※この記事は「ゆうゆう」2024年1月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のため再編集しています。

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