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【中野翠のCINEMAコラム】 誘拐された娘を取り戻す! 犯罪組織に挑む『母の聖戦』

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中野翠

ユニークな視点と粋な文章でまとめる名コラムニスト、中野翠さんが、おすすめする映画について語ります。今回は、メキシコを舞台に、娘を誘拐された母が犯罪組織を相手に命がけの闘争に身を投じる『母の聖戦』と、インドの田舎町の少年が映画に出会い成長する『エンドロールのつづき』を紹介します。どちらも実話をもとにした作品です。

タイトルもそのまんま。悪党たちに誘拐された娘を、自力で取り戻す母親の物語—— 。

日本では金がらみの誘拐事件は、めったにないが、メキシコでは年間6万件にも及ぶ誘拐事件が起きているという。警察がまったく頼りないのだろう。

ヒロインのシエロは、中年のシングルマザー。ひとり娘ラウラが犯罪組織に誘拐された。なけなしの20万ペソの身代金を支払っても娘は帰って来ない。犯人たちは金を手に入れたうえに、娘は売り飛ばそうという魂胆なのだ。最悪。シエロは自力で娘を取り戻す決意をする。まさに「聖戦」。

シエロは情が深いばかりでなく、知的な女でもあった。軍のパトロール部隊をひきいる中尉と協力関係を結び、徹底的に犯罪組織を追跡したり監視したりして、「敵」 の実態をつかんでゆくのだ。「情」に流されない「理性」の強さ。そこがカッコいい!

この映画、実話をもとにしたものだという。メキシコでは“誘拐ビジネス”が横行。それでも人々は「組織」の報復を恐れ、警察は頼りにならず、泣き寝入り......という状態だという。いやーっ、ジレったいですね。

ヒロインを演じた女優アルセリア・ラミレスは、意志の強さを感じさせる大人顔で役柄ピッタリ。

場所はガラリと違う大都会を舞台にした映画だが、『グロリア』(1980年)を思い出した。少年を守ってマフィアとたたかう中年グロリア(ジーナ・ローランズ)。中年女のたくましさとカッコよさ、そして情の深さ……名作だった。

監督/テオドラ・アナ・ミハイ 出演/アルセリア・ラミレス、アルバロ・ゲレロ、アジェレン・ムソ、ホルヘ・A・ヒメネス 他 2023年1月20日よりヒューマントラストシネマ有楽町 他 全国公開(ベルギー、ルーマニア、メキシコ 配給/ハーク)©MENUETTO FILM, ONE FOR THE ROAD,LES FILMS DU FLEUVE, MOBRA FILMS&TEOREMA

さて、1月20日公開予定のインド映画『エンドロールのつづき』も見逃せない。こちらも実話をもとにしたものだという。

インドの田舎町の少年が、珍しく街に出かけて映画を観る。生まれて初めて観る映画に少年はビックリ仰天。やがて映画ひとすじの人生に……。よくあるパターンながら、インドの田舎と都会の風物も、おおいに見もの。



※この記事は「ゆうゆう」2023年2月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のため再編集しています。

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